名大ら、クフ王のピラミッド内に謎の巨大空間 ミューオン素粒子で発見

2017年11月4日 16:28

 名古屋大学らの国際研究チームは2日、クフ王のピラミッド内部に長さ30メートル以上の巨大な空間があるとの調査結果を、英科学誌ネイチャーで発表した。

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 エジプト考古省は2015年10月、「地球に降り注ぐ宇宙線を利用し、首都カイロ近郊のピラミッド内部を調査する」と発表。最新の科学技術を駆使した国際共同研究「スキャン・ピラミッド」プロジェクトが発足した。プロジェクトには、エジプトと日本、フランス、カナダの国際研究チームが参加。エジプトで最大のクフ王のピラミッドを調査していた。

 ピラミッドを一切破壊することなく、ピラミッド内部を調査するために、最先端技術にミューオン素粒子での内部透過、赤外線イメージング、レーザー測量による精密な3次元再構成技術を採用。名大はミューオンでの内部透過を担当しているという。

●クフ王のピラミッド内に30メートルの謎の空間

 ギザの三大ピラミッドの一つであるクフ王のピラミッドは、約4,500年前の建造物で、高さ約140メートル、底辺約230メートルという世界最大規模を誇る。

 これまでに、棺は発見されているが、ミイラや副葬品は発見されていないという。今回発見された30メートル以上の巨大空間がなにかは今後の調査に委ねられるが、今世紀の大発見につながる可能性もあり、世界中が関心を注ぐであろう。

●ミューオン素粒子での内部透過

 ミューオンは、1キロメートルの岩盤でも透過するという高い透過力を持つ素粒子であり、1平方センチメートル当たりに1分間に1個の割合で、常に地上に降り注いでいるという。

 この天然に降り注ぐミューオンを原子核乾版で捉えることで、レントゲン写真のようにピラミッド内の構造が把握できる。原子核乾版は、0.3ミリメートルと非常に薄いシート状の放射線検出器で、軽量・コンパクトで電力を必要としない特長を持つ。しかも可搬性があり、高い方向決定精度と広い視野を併せ持つ優れものだ。今後の考古学調査では必須の技術になる可能性を秘める。

 なお、このような特長を活かして、電源インフラが整っていない昭和新山や浅間山での火山観測、福島原子力発電所のタービン建屋内の観測などを行った実績があるという。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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