社内の不正は“隠せてしまうから隠す”ようになる
2017年10月30日 15:57
神戸製鋼所で製品の品質データの改ざんが明るみに出て、内部調査が進むほどに関連製品や関与した部署やグループ会社の範囲が拡大し、新たな改ざんが発覚してくる状況となっています。
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社長の会見の様子を見ていて、あくまで私の個人的な印象ですが、何となく言い訳が多くて反省している感じには思えず、過去にも同じような不正があったことを見ていても、このあたりの原因が組織風土にあったと言われても仕方がないと思います。
日産自動車でも無資格者による検査という不正がありましたが、このような社内での不正や隠ぺいというのは、その程度の大小はあるものの、私が見てきたどの企業でも必ず何かしらの問題がありました。
製品やサービスの品質にかかわる問題、顧客からの信用にかかわるような大きな問題もありましたが、それに関与したとされる社員のほとんどには悪意がなく、指摘されて本気で慌てたり、茫然としたり反省したりという人が大半でした。
要は自己判断もしくは一部の人たちの判断によって、「特に問題にはならない」「あえて表沙汰にしなくても自分たちで処理できる」と考えていたということです。
確かに組織風土の問題、マネジメントの問題ではありますが、なぜ不正や隠ぺいが起こるかと言えば、端的に言えば「それができてしまうから」ということです。「隠せてしまうから隠す」のだと思います。
やはり人間の心理として、自分のミスは指摘されないですめばそうしたいと思うでしょうし、手抜きや甘さが許されれば、そちらに流されてしまう人はたくさんいるでしょう。
ではどうすれば隠せなくなるのかと言えば、結局は「複数の目でチェックする」「情報公開と共有で不正やトラブルが見つかりやすくする」「システム化、仕組み化で改ざんできなくする」といった基本的なことです。「性善説」ではなく「性悪説」に立って管理する仕組みを作るということになります。
人がたくさんいる前、防犯カメラの目の前で盗みをする人は少ないように、当事者にとって発覚する可能性が高いと思われれば、ほとんどの不正は行われなくなるでしょう。
だからといって、これを100%の形で行うのは、こちらもまた簡単なことではありません。社長が不正や隠ぺいの先頭に立ってしまえば、それが社外の関連先にでも漏れない限りは絶対に発覚しませんし、かなり細かい管理の仕組みを持っている企業でも、組織の上席に近い人が関与すれば、不正も隠ぺいも可能になってしまいます。すべて「性悪説」で組み立てると、管理コストは高くなり、組織の柔軟性も失われます。どんな対策をしても盗みを100%防げないことと同じで、どこかに「性善説」による人への信頼がなければ、組織はうまく回りません。
ある社長に聞いたことですが、その会社はかなり詳細なマネジメントの仕組みと決まりごとがありますが、店舗で直接現金を扱うので、店の責任者が悪意を持って振る舞えば、どうしても不正行為の余地はできてしまうとおっしゃっていました。
そうなると、チェック方法や仕組みだけでなく、責任者の真面目さや信頼度も考慮しなければなりませんし、そもそも真面目だった人がたまたま借金を背負ってしまって不正に走ってしまったなどという例もありますから、やはり完全な対策というのはありません。
そうはいうものの、神戸製鋼所の様子を見ていると、過去から不正を気にしないような体質があるようにも見えますし、やはり対応や対策が足りなかったことは間違いありません。
基本的なことを組み合わせて対策していくしか方法はありません。今後の成り行きを見守りたいと思います。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。