ヒロツバイオ、「線虫がん検査」臨床試験も順調 世界展開に向け資金獲得
2017年10月30日 06:49
信金キャピタルは26日、HIROTSUバイオサイエン ス(ヒロセバイオ)が進めている線虫嗅覚を利用したがん検査の2020年1月の実用化や世界展開に対し、投資を決定したと発表した。
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日立とヒロツバイオは4月18日、線虫によるがん検査の実用化に向けた共同研究開発契約を締結。ヒロツバイオの線虫がん検査法「N-NOSE」の実用化に向けて、日立が開発した線虫がん検査自動解析技術を用いた共同研究をすると発表している。
ヒロツバイオは、2016年に起業した大学発のベンチャーである。起業のきっかけは、九州大学の広津助教の線虫に関する論文の斬新さであるという。それは、通常のがん検査では発見しづらいステージ0のがんの有無を、わずか一滴の尿から、線虫が嗅ぎ分けるという発見であった。
●線虫とは
がん検査法「N-NOSE」は、線虫という生物を利用する。線虫の体長は約1ミリで、色は透明。がん患者の尿に誘引され、健常者の尿には忌避する性質を持つ。95%の高感度でがん患者か健常者かを10分で見分ける。
寒天培地上で大腸菌を餌にして育つため、エサ代は安価である。また、雌雄同体なので、飼育や増殖が容易という。
線虫のがんの見極めには、条件がある。尿を薄めることと、餌の大腸菌を洗い流しておく必要があるという。
●線虫がん検査の特長
がんの有無を高い精度で検出可能であるが、がんの種類や場所は特定できない。つまり、1次スクリーニングの役割を担う。結果が陽性ならば、2次スクリーニングとして国立がん研究センターの血液検査を受けるという棲み分けらしい。
尿の検査であり簡便・苦痛なしで、検査時間も手作業で1時間程度。ステージ0のがんも検出可能な高感度である。日本国内の医療機関20施設以上と共同で臨床試験を行っているが、臨床試験でも95%の高感度を確認しているという。
安価にがんの1次スクリーニングが可能で、胃がん、大腸がん、膵臓がん、食道がん、胆嚢がん、胆管がん、前立腺がん、乳がん、肺がん、盲腸がんでの反応を確認しているらしい。
●日立の自動解析装置
例え、安価な線虫によるがん検査も特定の医師が作業したのでは、高価になる。そこで、自動解析装置を日立が開発したという。
先ず、線虫を培地から回収・洗浄して、尿検体のあるプレートに線虫を配置する装置である。医師が実際にやっている線虫の回収や洗浄を装置で実際に行うには、大きな困難を伴ったであろう。
次は、尿に反応する線虫を観測して、がんの有無を自動判定する装置である。こちらの機能は、線虫の動きを観測・判断するという画像診断技術を応用していると思われる。
●がん検査(ヒロツバイオや日立、「N-NOSE」)のテクノロジー
従来のマーカーなどの人工機器によるがん検査は、高感度を優先するため高額な装置となる。他方、線虫の人工機器を上回る感度を利用していること、そして線虫でのがん検査を自動化したことであろう。
がんによる死亡を防ぐ最も有効な手段は、早期発見・早期治療であり、安価で簡便なこの手法は、多くの支持を得るのであろう。(記事:小池豊・記事一覧を見る)