中国で寒さに強い遺伝子組み替え豚が誕生
2017年10月29日 23:46
中国科学院などの研究者がブタの遺伝子を組み換え、気温が低い環境でも体温を維持できるようにしたそうだ(Ars Technicaの記事、NPRの記事、Consumeristの記事、論文アブストラクト)。 脱共役タンパク質1(UCP1)は褐色脂肪細胞で熱を生成し、低温からの保護やエネルギー恒常性の維持に重要な役割を果たす。しかし、現在のブタはUCP1の機能を失っているため、寒さに弱く、脂肪が蓄積しやすい。冬季には生まれたばかりのブタが死亡しやすくなるため、養豚の生産効率低下を防ぐには暖房が必要になり、費用がかさむ結果になる。 研究者はゲノム編集技術「CRISPR-Cas9」を用いてマウスのUCP1遺伝子をブタの細胞に挿入。ブタのUCP1機能は2,000万年前ほどの変異で失われたとのことで、これを復元することになる。この細胞から2,553個以上のブタのクローン胚を作成してメスのブタ13頭に着床させたところ3頭が妊娠し、UCP1組み込み(UCP1 KI)ブタのオス12頭が生まれたという。UCP1 KIブタは寒さに強く、4時間の低温テストでも体温を維持できたそうだ。また、赤身肉の比率は通常のブタが50%なのに対し、UCP1 KIブタは53%。体脂肪率は通常のブタが20%、UCP1 KIブタは15%だったとのこと。 研究者は遺伝子組み換えによりブタの健康状態が改善し、養豚の費用を抑えることができるようになるだけでなく、赤身肉の比率が増えることで肉質も改善できると考えているようだ。実験では肉質の評価が高いブタの品種を使用しており、遺伝子組み換えによる味への影響はないと考えているとのこと。13頭の健康状態は良好で、1頭は交尾して子をもうけているそうだ。 ただし、実際にUCP1 KIブタが食品として流通可能になるかどうかは食品規制当局の判断次第となる。米食品医薬品局(FDA)は遺伝子組み換えサーモンを認可しているが、認可には10年以上を要したという。また、消費者に受け入れられるかどうかという問題もある。UCP1 KIブタは生後6か月で解剖し、分析を行うとのことだ。