東芝、日本人のゲノム解析ツールを強化 「ジャポニカアレイv2」を開始
2017年10月28日 21:14
東芝は27日、日本人のゲノム解析ツール「ジャポニカアレイv2」を活用したゲノム解析サービスを、大学や病院臨床部門、製薬企業などに向けて開始すると発表した。日本人の疾病や形質などと遺伝子多型との関連性を解き明かす研究の進展に寄与する見込み。
【2014年にサービス開始】東芝、日本人ゲノム解析ツールを用いたゲノム解析サービスを開始
なお、このジャポニカアレイv2は2014年12月から実施してきた「ジャポニカアレイ」を強化したもの。人を形作る細胞、その核の中にある染色体にはDNAが含まれている。そのDNAの一部が遺伝子と呼ばれるが、DNAの中には遺伝子でない部分もある。この遺伝子でない部分も含めた、遺伝情報の全体がゲノムだ。
ジャポニカアレイは、研究機関から送られた血液や唾液、DNA検体などからこの個人のゲノムの多様性を解析するサービス。東北大学東北メディカル・メガバンク機構により構築された「全ゲノムリファレンスパネル」を基礎とした日本人向けのゲノム解析ツールであり、開発はCOI東北拠点が担当。
高品質でしかもコスト競争力のあるアメリカのサーモフィッシャー・サイエンティフィック社製のAxiomプラットフォームを採用し、遺伝子の遺伝情報を保持する塩基において日本人に特徴的な配列を持つ約67万5,000箇所のSNP、各個体差の原因とも言われるそれを1枚のチップに搭載することで短時間での遺伝子多型解析を実現した。
また、その解析結果からのゲノム構造の再構成も行える。それまでは、例えば約30億塩基のゲノム構造を解析しようとすれば、解析にかかる時間は1カ月以上で、さらにスーパーコンピュータ、データを解析する専門研究者などのインフラが必要だった。
そのため1人当たり50万円以上の費用が求められ、大規模なサンプル解析の実施に要されるコストがあまりにも高くなってしまうという現実があった。しかし、ジャポニカアレイを活用すれば、解析にかかる時間は約1週間、1人当たりにかかる費用は税抜きで1万9,800円と、そのコストは遥かに低くなる。
そういった効果もあって、ジャポニカアレイはこれまで幅広い研究機関で活用されてきた。そしてジャポニカアレイv2では、自己免疫疾患や臓器移植時の移植片対宿主病など様々な疾病との関連が知られているHLA領域のSNPが約7,000個と、従来のジャポニカアレイの約2倍に増強されている。
東芝は今後、これにより同分野での研究を促進させ、日本の国際競争力向上へ貢献していきたいとしている。(記事:小椋恒示・記事一覧を見る)