住宅火災警報器義務化から10年、電池切れが急増 点検・確認も必要に

2017年10月23日 10:51

冬が近づくにつれて、とくに気をつけたいのが住宅火災だ。消防庁の発表によると、2017年1月~3月における総出火件数は、11739件。その内、建物火災は6312件にのぼる。また、住宅火災による死者(放火自殺者等を除く)数は338人。火災の多い冬期とはいえ、尋常ではない数だ。

 そんな住宅火災の防止対策の有効な手段の一つとして考えられるのが、住宅用火災警報器だ。これを基準通りに設置し、正常に稼働させることで、火災による死者も30%程度減らすことができ、延焼面積も半減するという調査データがある。

 2006年6月1日に施行された改正消防法により、新築住宅への住宅用火災警報器の設置が義務付けられ、既存住宅についても2011年6 月までに全ての市町村の条例において義務化されている。ところが、消防庁の調査では、2017年6月1日時点での全国設置率は81.7%。全国条例適合率に至っては66.4%と、まだまだ万全とは言い難い。

 また、義務化から10年経った今、電池切れや本体内部の電子部品の劣化により火災を感知しなくなることも懸念されている。実際、消防庁の調査では、作動確認を行った世帯の約2%で住宅用火災警報器の電池切れや故障が確認されたという。

 消防庁では、報道機関や消防機関等と連携し、点検や電池交換などの維持管理の啓発活動を行っており、過去5年の住宅火災の割合が全国平均を大きく上回る大阪では、大手家電量販店の上新電機やヤマダ電機、ホームセンター業者のナフコ、さらにはJR西日本や南海電鉄などの鉄道会社が協力し、市消防局や総務省による啓発動画を店頭で流すなど努めている。

 住宅用火災警報器に限らず、防災対策は「やれば終わり」ではなく、その後も定期的な点検やメンテナンスを行う必要がある。せっかくの備えも、いざという時に役に立たなければ意味がない。それどころか、設備に頼りきりになってしまって注意を怠った結果、かえって最悪の事態をも招きかねない。

 とはいえ、日々の生活の中で、住宅に設置された様々な機器類の点検やメンテナンスを細かく行うのは困難だ。しかも住宅の場合、防災設備だけでなく、屋根や軒下、排水溝などの状況、棟下地状況等々、素人ではチェックしにくいところも多い。可能であれば、プロの住宅業者に定期的に点検やメンテナンスを依頼するのも一つの方法だ。

 例えば、木造住宅メーカーのアキュラホームでは「永代家守り」という取り組みを行っている。これは、販売した後も同社のスタッフが積極的に入居者訪問し、住みごこちや経年による住宅の不具合などについて調査などを行い、より快適に暮らすためのアドバイスを行っているもので、時には同社の社長自らが訪問することもあるという。防災設備をはじめ、外部まわりや排水桝に至るまで、素人では見落としがちな箇所まで目を光らせてくれるので、入居者にとっては心強いことだろう。

 これから住宅火災の増える季節。それは決して対岸の火事ではない。住宅用火災警報器の電池交換や動作確認はもちろん、防火設備の点検や消火器等の確認、隣家や近隣で火事が発生した時の避難経路を確保しておくなど、今一度、もしもの時に備えて確認をしておきたいものだ。(編集担当:松田渡)

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