起業家の減少、高齢化による影響も
2017年10月23日 11:02
日本経済において高齢化が及ぼす影響には様々なものがある。起業家の減少もそのひとつだ。経済が活性化し成長していくためには技術革新が欠かせない。新たな技術やアイデアを発展させることがさらなる経済成長につながっていく。そして、そのために必要な存在となるのが起業家である。新たな技術開発やアイデアの発掘というものは既存企業でもやっていないというわけではないが、こうしたイノベーションと呼ばれるものは新規の企業から生まれることが多い。つまり、経済の発展には起業家の存在が不可欠なのだが、それが高齢化によって減少する可能性がある。
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新たな技術やアイデアというものは、年齢が若いほうが有利である。そのため、起業したいと考える人の多くは基本的には20~30代の若年層だ。しかし、技術やアイデアが浮かんだからといってすぐに起業ができるというわけではない。実際にビジネスを始めるためにはそのための経験が不可欠であり、起業をするためにはまずは準備期間として就職するというのが一般的である。
ところがここでも高齢化社会が大きく影響する。起業のためのノウハウを学ぼうと就職をしても、組織の運営を行うのは古参の社員であり若者がその立場になること自体が難しい。従って、新たなビジネスを行おうとしても事業化するために必要な知識と経験を得ることも難しくなっていく。結果的にこうした知識や経験を積む頃には40代となっていることが多く、この頃になると起業のための意欲はかなり少なくなっている。
もちろんこれはかなり極端な見方といえるかもしれない。起業家の中には高齢になってから事業を始めるという人もいるからだ。しかし、日本経済全体を考えた場合、ただ単に事業を始める人がいれば良いというわけではない。1979年には設立された企業のうち7%の企業が60歳以上によって起業されていたが、2012年には37%にまで上昇している。逆に若年層が起業した割合は12%と減少しており、このことからも高齢化によって若い人が起業するケースが減っていることがわかる。
高齢者が起業しているから良いではないか、という意見もあるかもしれないが、高齢者が新たな技術やアイデアをもとに事業をスタートするケースはほとんどない。むしろ自身の生活のために小さな事業を起業する場合が多い。経済が成長していくためには新たなアイデアが不可欠だが、このような状態ではそれも望むべくもないだろう。民間レベルではあるが、起業家を支援するプログラムなどもあり、今後の日本経済の発展という意味ではこうした起業支援の事業も広い範囲で考えていく必要がある。(編集担当:久保田雄城)