ノーベル文学賞のカズオ・イシグロ書籍が売り切れ続出、原作ドラマも再放送
2017年10月16日 07:05
■日系イギリス人のカズオ・イシグロが文学賞受賞
2017年10月5日、長崎県出身の日系イギリス人のカズオ・イシグロがノーベル文学賞に選ばれた。日本にゆかりのある人物が受賞ということもあり、国内ではイシグロフィーバーとなっているようだ。
【こちらも】今年のノーベル文学賞に輝くカズオ・イシグロ氏の6年前の来日姿
関連書籍は販売・貸出ともに予約待ちの状態で、1,000件を超える予約待ちとなっている場所もあるという。書籍だけでなく、カズオ・イシグロの作品を原作にしたドラマの再放送も決定した。
■カズオ・イシグロとは?
カズオ・イシグロは1989年に「日の名残り」でデビューした作家だ。日本出身であるが現在はロンドンに在住しており、書籍も英語で書かれたものが翻訳される形で出版されている。しかし、書籍の内容については日本が舞台になっていることもあり、「邦画から受けた影響が作品に反映されている」と過去のインタビューで答えたこともあるようだ。
カズオ・イシグロは研究員やミュージシャン活動の経験もあるようだが、最終的には文学者の位置に落ち着くことになった。そして、1982年にイギリス在住の長崎出身女性の人生を描いた「遠い山なみの光」でデビュー。この作品が王立文学協会賞を受賞。
さらに3作目の「日の名残り」では、イギリス最高の文学賞ブッカー賞を受賞することになった。作家としての地位を着実に築いたカズオ・イシグロだが、本作品はジェームズ・アイヴォリー監督によって映画化されている。主演には「ハンニバル」で知られるアンソニー・ホプキンスが抜擢されるなど、大きな注目を集めたのがわかる。
作家として絶対的なセンスを持っていることがわかるカズオ・イシグロだが、2015年には10年ぶりの長編小説「忘れられた巨人」を出版。舞台はアーサー王が死んだ後の世界で、ブリトン人の老夫婦が息子ともう一度暮らすため旅に出るという物語だ。
老夫婦は旅をする中でアーサー王の血縁者と出会い、一緒に旅をすることになる。その道中で宗教に関する問題やファンタジー的な要素が含まれており、読者はカズオ・イシグロの世界観に誘われることになる。骨太な文学作品ということもあり、秋の夜長に読むにはぴったりの内容となっていそうだ。
■日本ではすでにドラマ化をしていた!
ノーベル文学賞を受賞するまでカズオ・イシグロの名前を聞いたことが無い人もいただろう。しかし、日本ではすでに彼の作品を原作にしたドラマ「私を離さないで」が放映されている。
「私を離さないで」は世間から隔離された施設で育てられた恭子(綾瀬はるか)、友彦(三浦春馬)、美和(水川あさみ)の物語だ。文学よりもミステリー要素が強く、3人に秘められた「運命」を巡る物語となっているようだ。ノーベル文学賞受賞を受け、本ドラマは2017年10月18日26時35分からTBS系列で再放送も決定している。
また、「私を離さないで」はカズオ・イシグロ作品の中でも読みやすいものになっている。文学作品に抵抗がある人は、まずこの作品からはじめてみるのもいいかもしれない。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る)