世界のウェアラブルデバイス市場、4年後には約2倍に成長

2017年10月16日 07:46

 Apple watch などの登場で一躍注目されたウェアラブルデバイス。しかし、その後は爆発的な普及とまではいかなかったのが現状だ。その理由の一つとしては、ウェアラブルデバイスは単体では能力を発揮できないことや、スマートフォンの小型化、多機能化などで、とくに必要性がないと思う人も多いことが挙げられるだろう。

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 しかし、IDC Japanが今年7月に発表した、ウェアラブルデバイスの2021年までの世界/国内出荷台数予測によると、2017年度は 1億2550万台と予測されるウェアラブルデバイスの出荷台数が、2021年にはその2倍に近い2億4010万台にまで成長するという。

 現在、市場の約半数を占めているのは腕時計型。IDC Japanの予測では、今後も腕時計型が市場をリードする傾向が続くとみている。つまり、とくに近い将来に新型や画期的なウェアラブルデバイスが登場するというわけではないらしい。

 では、どうしてわずか4年で倍近い成長をするとみているのだろうか。

 理由はいくつか考えられるが、中でも大きな要因と思われるのは、社員の健康管理のために企業でのウェアラブルデバイス導入が始まりつつあるということだ。

 昨今、日本で話題の「働き方改革」を実現するためには、生産性の向上は欠かせない主要項目である。それはオペレーションだけの問題ではなく、社員の健康管理も重要なファクターとなる。病気やケガ、ストレスなどによる離職、休職などが頻繁に起こるようでは、いくら現場の体制を効率化しても生産性は上がらない。逆に言えば、社員の心身の健康状態を確実に把握し、トラブルを事前に防止できれば、生産性の向上につながるということでもある。しかも、社員の健康管理への意識が高いと、企業の社会的評価も上がる。

 そこで現在、企業が社員の健康管理の新しい手段として注目しているのが、ウェアラブルデバイスを活用したヘルスケア・ソリューションなのだ。

 例えば、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に2年連続で選ばれている伊藤忠商事は、若手社員に腕時計型のウェアラブル端末を支給しているが、その目的は肥満防止だ。30代、40代の社員は、いわゆる生活習慣病予備軍。血圧や心拍数、歩行数、睡眠時間などの生体データを測定することで自己管理を促すだけでなく、そのデータをもとに保健師による生活習慣の指導を行うなど、健康管理に役立てている。

 そんな中、デバイス自体の性能向上も求められるようになってきた。血圧や心拍数などだけでなく、一つの小さなウェアラブルデバイスで、ストレスや血管年齢をはじめ、様々なバイタルサインを測定したいという要望が高まっているのだ。

 しかし、複雑なバイタルサインを測定するためには、サンプリング周波数を高めて時間単位の測定回数を増やす必要があるが、そうなると消費電力が大きくなり、アプリケーションの駆動時間が短くなるという課題がある。日に何度も充電しなくてはいけないような代物では、ウェアラブルとしては本末転倒だ。

 優秀な日本の電子企業も頭を悩める問題だが、これについても徐々に解決するような製品が登場し始めている。

 ロームが2017年10月に発表したハイスピード脈波センサ「BH1792GLC」などがまさにそれだ。同製品は「高精度」「低消費電力」で評価の高い同社の脈波センサの第2弾にあたるもので、低消費電力において業界最小クラスの消費電流0.44mA(脈拍数測定時)を達成。1024Hz の高速サンプリングにも対応可能となった。従来品よりも最大で32 倍早く脈波を測定できるようになったことで、ストレス測定や血管年齢測定など、高速サンプリングを必要とするバイタルセンシングに力を発揮する。

 会社側から支給されたウェアラブルデバイスを装着することは「管理されているみたいで嫌だ」と抵抗を感じてしまう人もいるかもしれない。しかし当然、企業側だけにメリットがあるわけではなく、社員側も健康管理を公にできることで、休暇をとりやすくなったりというメリットも大きいはずだ。ウェアラブルデバイス装着が当たり前の世の中になれば、日本の社会から、ブラック企業などという不名誉な言葉は無くなるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)

 

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