車載ネットワークに動き 電力線通信による軽量化やサイバー攻撃の防御
2017年10月12日 20:45
車載ネットワークに新たな動きがある。日立らの「電力線通信を用いた車載ネットワーク」とパナソニックやトレンドマイクロの「車載ネットワークのサイバー攻撃の防御」である。
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日立製作所と日立オートモティブシステムズは11日、車載ECU(Electronic Control Unit)と、複数のセンサーやアクチュエーターを個々につないでいるワイヤーハーネスを集約して共有化し、ネットワーク接続を可能にする、車載用の大容量直流の電力線通信技術を新たに開発したと発表。先進運転支援システムや自動運転によって、確実に増加するワイヤーハーネスの総数と総重量を40%削減できる技術であり、実証実験などの結果によっては、主流の車載ネットワークとなる可能性を秘める。
一方、パナソニックは10日、自動運転・コネクティッドカーに対するサイバーセキュリティ対策を実現するオートモーティブ侵入検知・防御システムを開発したと発表。翌11日には、トレンドマイクロがIoT向けセキュリティ戦略を発表。フルレイヤーのセキュリティを業種毎に最適化し提供するとした。自動運転やコネクティッドカーに対するサイバー攻撃は、時に人命にかかわる問題に発展する可能性がある。内閣府によれば、自動運転の実証実験と並行して、サイバー攻撃にたいする実証実験が2018年から開始される計画である。
●電力線通信を用いた車載ネットワーク(日立ら)
自動車1台のワイヤーハーネスは、1,000本以上ともいわれ、その重量は数十キログラムにも達する。先進運転支援システムは、周辺状況を認識して車体を制御するために、センサー、ECU、アクチュエーターを必要とする。伴い、それらを接続するワイヤーハーネスも飛躍的に増加する。このワイヤーハーネスの総数を抑えて重量を40%削減、かつセンサーやアクチュエーターの自動コンフィギュレーションで効率的な設計を可能にするという。
自動コンフィギュレーションは、センサーとアクチュエーターの接続位置による配線抵抗の違いから各部品を識別する。そして、ワイヤーハーネスを共有化し接続するという。加えて、安定した通信を可能にするためにアクチュエーターを駆動する時の急峻な電流変化を抑えるように回路設計しているという。
●サイバー攻撃の防衛(パナソニック)
現在のITシステムは、世界中からのサイバー攻撃にさらされており、様々なセキュリティ対策の上で成り立っている。コネクティッドカーも例外に漏れずに対策が必要であるが、自動車はライフサイクルが長く、出荷時に想定していた攻撃よりも進化した攻撃にさらされる可能性がある。そのため、新たなサイバー攻撃への対策ルールを、車載機に搭載する監視モジュールに通知更新できるようにするようだ。
大まかな仕組みは、車載機内の侵入検知とクラウド内の車両侵入検知からなる。車載機内では、攻撃の初期段階であるインターネット接続機器の監視、第二段階であるCAN(Controller Area Network)への侵入監視、同様にEthernet通信への侵入監視の3つの独自技術であるという。他方、クラウド内では、複数車両の車載機から収集する大量のログを機械学習により解析するという。
●車載ネットワークのテクノロジー
今回の車載ネットワークの構成や車載のサイバーセキュリティ対策は、自動運転には欠かせない技術である。実証実験が可能なレベルの完成度になることが重要であろう。実証実験を踏まえて、改良がなされることで、自動運転は普及していくのであろう。(記事:小池豊・記事一覧を見る)