神戸製鋼所の罪と罰 現状認識の甘さと、拡散する問題の重大性

2017年10月11日 20:14

 罪なことをしたものだ。神戸製鋼所が200社に及ぶ顧客に対して出荷したアルミ製部材は、性能データを改竄したもので、顧客が求める品質基準を満たしていない。顧客は疑いもせずに(当たり前だが)そのアルミ製部材を組み込んだ製品を消費者へ出荷していた。

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 顧客の業種は航空宇宙事業や自動車メーカー、鉄道車両と輸送運搬事業者が多く、アルミ製部材の性能不足が原因の事故が発生した場合には大きな事故につながることが懸念されている。もちろん、そんなぎりぎりの製品である可能性はほとんど考えられず、現に今までも当該事故は発生していないし、神戸製鋼所も顧客メーカーに対して「現時点で安全性に問題はない」と説明している。だが、顧客メーカーは自社の製品に必要な品質基準で納品されていることを前提に製品を製造している。それを十把一絡げで「安全性に問題はない」と宣言するのはあまりにも大雑把ではないか?

 また、副社長が記者会見で「民間企業同士の取引で契約順守の意識が低かった」と釈明したのも理解できない。順守してくれない契約など契約に値しないのでないのか?もはやコンプライアンスとかガバナンスというレベルの話ではない。「約束はきちんと守りましょう」と小学生に言い聞かせるようなレベルである。

 直前には日産の検査不正問題が世間を賑わせていた。その問題の帰趨が見えないうちにさらに深刻な問題が発覚した。何故なら、日産の問題はどんなに大きくなろうとも“日産”という一企業が被る問題なのに、今回の神戸製鋼所のデータ改竄問題は、善意の200社に及ぶ取引先と末端消費者をも巻き込みかねない事態となっているからだ。日本の“モノづくり”にすら疑問を抱かせかねないのだ。

 そんな重大な問題であるにも関わらず同社の対応には疑問を感じる。事態の深刻さを適切に受け止めているなら、最初の記者会見には会長兼社長である川崎博也氏が対応すべきでなかったのだろうか?また、品質問題調査委員会を設置して、会長兼社長が委員長となって指揮を執るということだが、現状を鑑みれば第三者委員会を設置して、外部の目でしっかり審査すべき事案ではないのか?

 神戸製鋼所を見つめる市場の目は厳しい。10日の東京証券取引所では圧倒的な売り注文が殺到し、取引不成立のままストップ安で取引を終えた。今後も予断を許せる状況にはない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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