京大、奄美群島で生きたサンゴを家とする新種のヤドカリを発見
2017年10月10日 06:08
京都大学の研究グループは、鹿児島県の奄美群島・加計呂麻島で、生きたサンゴを家として持ち運ぶ新種のヤドカリを発見、これを「スツボサンゴツノヤドカリ」と命名した。
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今のところ、同種は奄美でしか発見されていないため、固有種であると考えられる。なお、学名はDiogenes heteropsammicolaとされた。
スツボサンゴツノヤドカリが家とするサンゴは、通常、ホシムシと呼ばれる環形動物と共生している種である。ホシムシは、自身にとっては安全な場所が提供される代わりに、サンゴが砂泥に沈むのを防ぐという相利共生の関係にある。
だが、この新種のヤドカリは、ホシムシに代わってホシムシが棲む空洞に入り込み、サンゴを家として持ち運ぶことで、やはりサンゴが砂泥に沈むのを防いでいると見られる。
このような、強い相利共生の関係を持つ生物種において、共生者が全く別の生物に入れ代わる事例は、過去には知られていないといい、であるならば初めての発見であるということになる。
また、ヤドカリという生き物はよく知られるように成長に従って大きな貝殻などに引っ越しをする性質を持つ生き物であるわけだが、スツボサンゴツノヤドカリの「家」であるサンゴは生きており、成長して大きくなるので、恐らく、スツボサンゴツノヤドカリは生涯引っ越しをすることはないのではないか、と推測されている。
サンゴとホシムシの共生関係がいかにして進化したかについては、未解明の点が多く残されている。サンゴとヤドカリの共生関係についていえば更に謎に包まれているといえる。今後の研究展望としては、サンゴ化石の観察などを通じ、宿貸しや牽引共生の進化の歴史を紐解いていきたいという。
なお、研究の詳細は、オンライン学術雑誌PLOS ONEに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)