「兼業・副業禁止」の理由が“過重労働の助長”?
2017年10月7日 16:07
政府の「働き方改革」の中で取り上げられたこともあり、「兼業、副業の推進」がいろいろなところで話題に上るようになってきました。
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兼業・副業に関しては、このところいろいろな調査がされており、それによると働く側の興味はおおむね高く、ある調査ではすでに副業をしている人を含めて60%近い人がやりたい意向があるという結果がありました。
ただ、これに対する企業の姿勢は、かなり積極的になってきているところは出てきているものの、まだまだ慎重なところの方が多いようで、どの調査を見てもまだ70%以上の企業が副業は禁止しているという結果でした。世間では一気に盛り上がっているように見えますが、働く人と企業の間ではまだまだ温度差が大きいようです。
ここで企業側に兼業・副業の推進、もしくは禁止の理由を聞いたデータがリクルートキャリアの調査にあり、これによると容認・推進の理由は「特に禁止する理由がない」が68.7%で最も高く、一方禁止の理由は、「社員の過重労働の抑制」が55.7%と最も高かったということでした。
これを見たときの私の感想は、推進企業と禁止企業の温度差も、思いのほか大きいということでした。
なぜなら、推進企業は「禁止理由がない」と言っているのに対し、禁止企業は「過重労働の恐れ」という、あまり理由になるとは思えない理由を無理やり探し出しているように見えたからです。よく言われる「本業への悪影響」というのはわからなくもないですが、兼業や副業はほとんどの場合で時間管理の主導権は本人にありますから、過重労働などに陥る可能性は限りなく少ないはずです。
実は推進企業が言っているように「禁止理由がない」ということに気づいているのに、禁止することを前提にして理由をこじつけているように思いました。
これは、一昔前のように終身雇用と右肩上がりの昇給が保障されている時代であれば、「会社が最後まで面倒を見るから、他の仕事に浮気はするな」と副業を禁止することへの正当性はあったかもしれませんが、今はそういう時代ではありません。
収入はなかなか増えず、リストラなどの会社都合で仕事を失うことも珍しくはない時代なのに、働く人が自分の生活を守る手段の一つになり得る兼業・副業を一方的に禁止してしまうのは、私は時代に見合っていない思考停止だと思います。
私が日ごろ接している企業から感じる肌感覚では、兼業・副業容認にかなり積極的なところが増えている印象ですが、この調査結果と突き合わせてみると、実は企業間の認識格差が大きく広がってしまっているのではないかという感じがします。どんどん新しいことに取り組む進歩的な企業と、大した理由が見当たらないのに変化を嫌う姿勢の企業です。そして、今のところは変化を嫌う、または嫌うほどではないが慎重な企業の比率が高いということです。
ここからは私の個人的意見ですが、兼業・副業には、今のうちから取り組みを進めていけば、自分たちが思っている以上に周囲からは先進的と見えるのではないかということです。これは優秀な人材獲得などで、思いのほか先行者利益も大きい可能性があります。
推進企業が「禁止理由がない」と言っているのは、特にデメリットが見当たらないということですし、本人が時間管理も含めて副業のやり方を考える中で、少なくとも“過重労働を助長する”ということはほとんど考えられません。本業への影響も同じことです。
兼業・副業への取り組みは、まだ消極的な企業が多い、今のうちこそがチャンスではないかと思います。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。