日本ハム・飯山裕志が見せた偉大過ぎる背中
2017年10月5日 20:10
今年のプロ野球もペナントレースがほぼ終わりに近づき、数多くの選手の引退のニュースが流れるようになった。
そんな中で、ひときわ異色の選手が引退を決め、最終戦で引退セレモニーが行われた。その選手とは、北海道日本ハムファイターズの飯山裕志選手だ。
通算成績2割3厘。安打数150本。ホームラン1本。出場試合数901試合に対し通算打席数は845。
データで見る限り、引退セレモニーをやってもらえる選手の成績どころか、同じチームに14年間在籍するのも奇跡のような数字が並ぶ。
ところが、飯山の引退セレモニーは、名球会入りした大選手のような中身の濃い、暖かいもので、現役の選手のみならず、OBたち、前監督のトレイ・ヒルマンや現在は楽天イーグルスで指揮を執る梨田昌隆監督、FAで移籍したオリックスの小谷野やソフトバンクの鶴岡までがVTRで出演するというサプライズ。
そして、メジャーにいるダルビッシュからも、ビールが届けられたそうである。
なぜ、飯山選手がこんなにも愛されるのか……というのは、彼の野球に対する姿勢が、世代を超え、ファンであろうと選手であろうと、高く評価されてきたからに他ならない。
一軍であろうと二軍であろうと、常に真っ先にグラウンドに出てきてノックを受け、バットを振る。
成績的に一軍に定着しているわけではないので、大物ルーキーも、二軍の練習で飯山の背中を見ているし、一軍に上がれば、打席でこそ期待できないものの、内野ならどこでもこなせるユーティリティプレイヤーとして、文字どうり守備固めとして万全の準備ができている。
今回のセレモニーでも、ともに二遊間を固めていた田中賢介が涙を流しながら花束を渡し、三遊間を固めていた小谷野栄一(現オリックス)が最後までベンチから飯山を見つめていたことを考えると、多くの選手から敬愛されていたことがわかる。
結果がなかなか出なくても、コツコツと自分の武器を磨き、スキルを高める努力は続ける。
とかく派手なパフォーマンスに軽妙な語り口のタレント性を武器にした昨今のスポーツ選手とは対照的な、燻しすぎるいぶし銀に、これだけ多くの人間が惹かれるという事実は、多くの選手たち、関係者たち、そしてファンたちに感銘を与えたに違いない。
「(ライバルと考えていた)田中幸雄選手や田中賢介選手には追いつけなかった。負けました」とスピーチしていたが、札幌ドームに鳴り響いた拍手と応援の声は、過去のどんな名選手とも肩を並べるものだった。
ちなみに、日本ハムというチームは、選手の出入りが激しいことでは球界でもトップクラスで、今年もシーズン中に、中継ぎエースの谷元を放出し、大谷の海外挑戦を許可するなど、主力選手がどんどん流出してしまうことで有名ではあるのだが、ときどき飯山のような地味な選手を我慢強く育成し続けることがある。
1997年に引退し、現在スカウトをやっている渡辺浩司など、14年近く、ほとんど2軍に定着していたが、1995年、正二塁手だった白井一幸が怪我をしたことで、1軍に昇格するや、3割近い打率をあげ、「14年目の新人王」と話題になったことを覚えているファンも多いのではないだろうか?
ともあれ、今年度で現役を去る選手すべてが、自分なりに納得のいく第二の人生を送ってくれることを願いたい。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る)