曲がる太陽電池に朗報続く ノーベル賞候補、脱レアメタル、世界最高の発電効率
2017年9月26日 17:31
“曲がる太陽電池”関連の技術に朗報が続いている。クラリベイト・アナリティクスは20日、「引用栄誉賞(ノーベル賞候補)」にペロブスカイト太陽電池の生みの親である宮坂力教授を選出。東大は22日、脱レアメタルのペロブスカイト太陽電池を発表。東芝は25日、5センチメートル角のフィルム型ペロブスカイト太陽電池で世界最高の変換効率10.5%を達成したと発表した。
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●ペロブスカイト太陽電池とは
現在量産されている太陽電池は、シリコン系である。丈夫で高変換効率という特長を持つ一方、曲げることができず設置場所の制約がある。
ペロブスカイト太陽電池は、2009年に宮坂力教授が提案した有機無機ハイブリッド太陽電池である。発表後にはシリコン系に匹敵する変換効率を達成している。また、塗布技術で作製できるため、フレキシブルで軽量な太陽電池を安価に提供できる可能性を秘める。
ベルギーのIMECは8月、4平方センチメートルのペロブスカイト太陽電池で変換効率23.9%を達成したと発表。シリコン系に匹敵する変換効率であるが、大きさに課題がある。
東京大学大学院の瀬川浩司教授らは22日、ペロブスカイト材料に、高価なレアメタルの代替に安いカリウムを5%加えることで、変換効率20.5%と高い性能と長寿命のペロブスカイト太陽電池を実現したと論文発表した。
●4年連続のノーベル賞受賞なるか
クラリベイト・アナリティクスは20日、「引用栄誉賞」22名を発表。日本からは、宮坂力教授の「効率的なエネルギー変換を達成するためのペロブスカイト材料の発見と応用」が選出された。去年までに世界の278人をノーベル賞の有力候補として発表しており、このうち43人がノーベル賞を受賞しているという。
●東芝のペロブスカイト太陽電池の特長
東芝が発表した「ペロブスカイト太陽電池」は、独自の塗布印刷技術を用いて、フィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールを作製し、5センチメートル角のサイズでは世界最高の変換効率10.5%を達成したという。
作製プロセスは先ず、樹脂フィルムを基板として用いることから、セル構造として150度以下の温度で作製可能なプレーナ型逆構造を採用(図1)。次に、大面積化の課題に対しては、有機薄膜太陽電池で培ったメニスカス塗布印刷技術でペロブスカイト多結晶膜の均一成膜に成功したという(図2)。
今後は、ペロブスカイト材料の組成変更やプロセス改善等により、モジュールサイズの拡大と変換効率向上を進め、基幹電源並みの発電コスト7円/kWhの実現を目指すという。(記事:小池豊・記事一覧を見る)