米連邦地裁、「We Shall Overcome」の一部の著作権を無効とする略式判決

2017年9月18日 07:44

米国・ニューヨーク南部地区連邦地裁は8日、フォーク歌手ピート・シーガーの演奏などで知られるプロテストソング「We Shall Overcome」の1番と5番の歌詞およびメロディーについて、著作権を認めるのに十分なオリジナル性がないとして、著作権を無効とする略式判決を出した(裁判所文書: PDFArs Technicaの記事Smithonian.comの記事We Shall Overcome Foundationのブログ記事)。 この裁判は著作権を保有するThe Richmond Organization, Inc.と子会社のLudlow Musicを相手取り、We Shall Overcomeのドキュメンタリー映画を製作したWe Shall Overcome Foundationと、映画「The Butler (邦題: 大統領の執事の涙)」(2013)で15,000ドルの著作権料を支払ったButler Films, LLCが著作権無効の確認を求め、クラスアクション訴訟として提起したものだ。原告側は1番/5番の歌詞およびメロディーが原曲「We Will Overcome」とほとんど同じであるとして、略式判決を請求していた。ちなみに、原告側の弁護を行った法律事務所は、「Happy Birthday to You」の著作権無効判決を勝ち取ったのと同じ法律事務所だ。 We Shall Overcomeの正確な起源は明らかになっていないが、18世紀の讃美歌などにも元型がみられるという。直接的な原曲となったWe Will Overcomeは1940年代にタバコ工場のストライキで歌われていたバージョンで、Highlander Folk Schoolで音楽を教えていたミュージシャンのジルフィア・ホートンが採譜。バージョンの1つが1948年に出版した学校の歌集に古い黒人霊歌(歌詞は生徒およびタバコ工場の労働者によるもの)として掲載された。シーガーもホートンからバージョンの1つを教わり、1948年にPeoples Songs, Inc(シーガーが会長との記載あり)が発行した雑誌「People's Song」にも掲載されている。 We Will Overcomeの歌詞は以下のとおり。 We will overcome We will overcome We will overcome some day Oh down in my heart, I do believe We'll overcome some day

 We Shall Overcomeの1番/5番の歌詞はWe Will Overcomeの「will」を「shall」に、「down」を「deep」に変えたもの。1952年以降複数の録音がリリースされており、シーガーが1960年に発行した雑誌「Sing Out! The Folk Song Magazine」にも1番(5番)の歌詞のみが掲載されている。 LudlowがWe Shall OvercomeをWe Will Overcomeの改変バージョンとして著作権を登録したのは1960年と1963年の2回。1960年には当時すでに死去していたホートンに加え、Highlander Folk Schoolで教えていたミュージシャンのフランク・ハミルトンとガイ・キャラワンを作者として著作権登録を行い、1963年にはシーガーを作者に加えて再度登録している。Ludlowが著作権登録したバージョンは2番~4番の歌詞が新作として加えられているほか、メロディーやリズムも一部変更されている。シーガーは原曲の作者がクレジットされなかったことを残念に思っており、1994年には自分の名前をクレジットから外すよう求めていたが、シーガーが死去した現在もそのまま作者としてクレジットされているとのことだ。

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