農研機構、ローコストで栽培できるバイオ燃料用資源作物「JES1」を実用化
2017年9月18日 07:20
農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)と国際農林水産業研究センター(JIRCAS)は、温室効果ガス排出削減に資する再生可能エネルギーに活用可能なバイオ燃料用資源作物として、エリアンサス「JES1(ジェイイーエスいち)」を開発、これを原料とする地域自給燃料を実用化した。
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JES1は、ペレットに加工することで、燃料にすることができる。栃木県さくら市において、耕作放棄地を利用した実験栽培が行われ、またペレット燃料を同市内の市営温泉施設のシャワーの熱源として利用する試みが既に行われており、燃料の地域自給が可能であることが確かめられた。
エリアンサスはイネ科の多年草であり、熱帯から亜熱帯の地域に自生するもので、日本での栽培は、東北南部から九州までにかけて可能である。種を撒いてから収穫が可能になるまでに3~4年かかるが、越冬が可能な条件のもとなら、長期的な栽培が、10年以上に渡って行える。
収穫は年1回、晩秋から晩冬にかけて行うが、温帯での栽培にあたっては、初冬から、低温により「立毛乾燥」という現象が起こり、水分が減少し、ペレットに加工するにあたって、乾燥の工程が必要なく収穫物の保存がしやすいというメリットがある。
JES1は、エリアンサスの、世界で初めて品種育成された第1号品種だ。農研機構とJIRCASが、種苗法に基づき、育成者権を保護されている。
試験栽培では、ヘクタールあたり二十数トンという乾物収量をあげた。事業栽培では試験環境ほどには緻密な栽培管理ができないため、これよりは若干収量が少なくなることが予測され、今後の展望としては、事業栽培でどの程度の収量が確保できるか、解明する予定であるという。
JES1のメリットは、その省力性と低コスト性から栽培が容易であり、耕作放棄地の減少に結びつけることができる、ということだ。今後のさらなる研究の進展と、その生産拡大が望まれるところである。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)