ヤマト運輸、路線バスによる「客貨混載」で農水産品を海外輸出 日本初

2017年9月16日 17:15

 ヤマト運輸と宮崎交通は15日、日本で初めて、路線バスを活用した「客貨混載」により農水産品を海外に輸出することを発表した。保冷専用BOX搭載の路線バスで国際クール宅急便も運送し、第一弾として、西米良村特産の西米良サーモンを香港の日本食レストランに輸送するという。

【こちらも】バス・タクシーで貨物が運搬可能に 9月より規制緩和

 ヤマト運輸は2015年より岩手県や宮崎県、熊本県などの過疎地域を中心に、路線バスを活用した「客貨混載」を行ってきた。2017年には宮崎県にて保冷専用BOXを導入し、クール宅急便として西米良サーモンの輸送も実現している。

 今回は宮崎交通の路線バスと国際クール宅急便を組み合わせ、高鮮度の農水産品を海外に向けて輸出する。まずは香港への販路を持つ商社「NANA FARM」のパイプを生かし、西米良サーモンを香港の日本食レストラン「元気一杯」へ翌々日に配送するという。

■「客貨混載」による海外輸送、一連の流れ

 今回の「客貨混載」による海外輸送の流れは以下のようになる。

 1.ヤマト運輸のセールスドライバー(以下、SD)が井戸内養魚場から西米良サーモンを集荷

 2.SDは西米良村のバス停留所で宮崎交通の路線バスに積み込む

 3.宮崎交通のドライバーが西都バスセンターでSDに引き渡す

 4.SDは県内のヤマト運輸物流ターミナルに発送

 5.ヤマト運輸は物流ターミナルから宮崎空港と羽田空港を経由、那覇空港へ輸送

 6.那覇空港から香港空港まで輸送

 7.香港ヤマトの物流ターミナルより現地SDが目的地まで配達

 「客貨混載」とは人と貨物を同じ車両で運ぶことである。現行の制度ではトラックは荷物を、バスは人を運ぶ業務と明確化されているが、一定の条件下ではバス事業者等が貨物を運ぶことが可能となっている。

 「客貨混載」のメリットとしては、運輸会社のトラック代や燃料費の節約、それに伴う二酸化炭素排出の削減が挙げられる。路線バスにおいても、運輸会社の荷物を代行輸送することで新たな収入源となる。また過疎地では路線バスが赤字路線であることが多く、「客貨混載」により路線が維持されることで、病院やスーパーなどを活用する住民にとってもメリットがある。

 ヤマト運輸は8月に隅田川を運行する水上バスを活用して、旅客と貨物を一緒に運ぶ実験を行った。スーツケース数個分の台車を乗船口より積み込み、ヤマト運輸の配達員が同乗して隅田川を下ったという。同社は今後もこうした「客貨混載」という柔軟な手法により、国内のみならず海外への販路拡大を目指し、スピーディーな輸送スキームの構築に注力するとしている。

関連記事

最新記事