天の川銀河における中質量ブラックホールの実在が裏付けられる
2017年9月11日 06:15
我々の住む太陽系が存在するこの「天の川銀河」において、理論的には存在が予測され、また幾度か検出の報告が上がりつつも確定には至っていなかった「中質量ブラックホール」の実在を裏付けるデータを、慶應義塾大学理工学部の研究グループが確認した。
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中質量ブラックホールとは何か。そもそも、ブラックホールと一口に言っても、その質量は様々である、と考えられている。太陽の数百万倍の質量を持つものが超大質量ブラックホール、太陽の数倍程度の質量のものが恒星質量ブラックホール。そして、それらの中間に位置づけられるものが、「中質量ブラックホール」というわけである。
ちなみに、天の川銀河の中心を構成する超大質量ブラックホールとしてその存在が推定されているいて座エー・スターは、太陽の約260万倍の質量を持つと考えられている。
さて、今回の研究について話そう。研究チームは、南米・チリにある大型電波干渉計、アルマ望遠鏡ことアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計を用いて、天の川銀河の中心部分、その中心核から約200光年の位置にある特異分子雲CO-0.40-0.22の詳細な電波観測を行った。
この特異分子雲は、異常に速度幅が広いことから、内部に太陽の10万倍ほどの質量を持つブラックホールが潜んでいる可能性が、以前から指摘されていたものである。
観測の結果として、その特異分子雲の中心近くに、コンパクトな高密度分子雲と、点状電波源が検出された。この電波源は、観測データからプラズマでも星間塵からの熱的放射でもなく、ブラックホールの本体である、と考えられるという。
この発見は、天の川銀河において「中質量ブラックホール」候補の実態が確認された初めての例となる。
なお、研究の詳細は、英国の科学専門誌『Nature Astronomy』に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)