新潮社とヤフー、誌上とWEBで新作小説を同時連載する試み

2017年9月9日 11:29

 新潮社とヤフーが「新しい読書体験」の提供を目指す新たなプロジェクトをスタートさせた。月刊文芸誌『新潮』と、「Yahoo! JAPAN」スマートフォン版において、上田岳弘氏の最新作「キュー」を同時連載するというものだ。

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 『新潮』は、日本でも最も歴史のある文芸誌である。創刊は、日露戦争が始まった年である1904年。一説には現役で世界最古の商業文芸誌だとも言われる。そしてYahoo! JAPANはといえば、言わずと知れた日本最大級のネット情報サイトだ。

 企画が開始されたのは9月7日。三島賞受賞作家・上田岳弘氏の最新作「キュー」を、雑誌では同日発売の『新潮』10月号から、毎月1章ずつ掲載。Yahoo! JAPANでは、1章を8ほどのパートに分割し、同日から週2回更新で掲載していく。なお、WEB掲載版はすべて無料での閲覧が可能である。

 WEBでの閲覧のインターフェイスとデザインは、クリエイティブ・イノベーション・ファームのタクラム・デザイン・エンジニアリング(以下、Takram)が手掛けた。

 このプロジェクトは、単に小説を連載するという枠組みを越え、新潮社、ヤフー、Takramの3社、そして上田岳弘氏が、共同でひとつの作品を作り上げていくものであるという。

 Yahoo! JAPANでの連載では、「新しい読書体験の提供」をコンセプトに、誌面では実現できない、独自のデザイン性と操作性を追求する。電子媒体ではあまり一般的ではない縦書きの文字組を採用しつつ、親指だけで操作可能な縦スクロールのページ移動を可能とする。

 また、不意に現れる自律的なアルゴリズムによって作られる「ジェネレーティブアート」による「動く挿絵」を導入、読者の数だけ異なる挿絵が描かれるという仕様になっている。

 最後に、小説「キュー」の概要を紹介する。

■「キュー」作品概要
 高校時代に出会った前世の記憶を持つ少女。彼女と同じ名の女性が目の前に現れた時から、平凡な心療内科医は、人類の進化を巡る闘争に巻き込まれた。長年寝たきりの祖父がその鍵を握るというのだが――。シンギュラリティへのカウントダウンが始まった人類のその先を予言する、想像力の冒険が始まる。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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