飛来する黄砂が急性心筋梗塞のリスクを高める可能性が示される
2017年9月8日 08:18
ユーラシア大陸の大砂漠地帯の黄色い砂が、季節風に乗って日本列島にやってくる現象を「黄砂」と言うが、今回、統計的なデータから、黄砂への人体の暴露が急性心筋梗塞のリスクを高めるかもしれない、という可能性が示された。
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今回、研究に参加したのは、熊本大学、国立環境研究所、京都大学、工学院大学、そして国立循環器病研究センターからなる共同研究グループである。
黄砂は、ユーラシア大陸の砂漠域、すなわちゴビ砂漠やタクラマカン砂漠から、風に乗り、季節風に運ばれてはるばる日本へとやってくる。太古からある現象ではあるのだが、砂が運ばれてくる途上で大気汚染物質などが付着するため、現代になってから、黄砂が循環器疾患、アレルギー疾患、呼吸器疾患などの増加に関わっているのではないか、という指摘があった。
今回の研究では、さしあたって循環器疾患の急性心筋梗塞に着目して分析が行われた。黄砂が比較的多く観測される九州の熊本県の、急性心筋梗塞に関する「熊本急性冠症候群研究会」による網羅的なデータベースを用い、黄砂と複合することによって急性心筋梗塞が引き起こされやすい性質が究明された。
データベースから割り出すことのできた、2010年4月から2015年3月にかけての研究期間における、黄砂の観測された日(データは熊本気象台のものに基づく)は、41日であった。
分析の結果、黄砂の翌日に心筋梗塞を起こした患者群の持つリスク要因は、まず「年齢が高いこと」、そして「女性であること」、「高脂血症ではないこと」、「糖尿病であること」、「慢性腎臓病であること」、などであることが分かった。特にこの中でもリスク要因として比重が高かったのは、慢性腎臓病である。
なお、今回の研究では、黄砂が具体的にどのような機序をもって心筋梗塞を引き起こすのか、ということまでは明らかになっていない。今後の展望としては、黄砂の濃度に着目したさらなる分析などを行いたいという。
研究の詳細は、European Heart Journal 2017に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)