白物家電市場、2017年も好調 高機能化・高付加価値を支える原動力
2017年9月3日 16:59
スマートフォンの普及や自動車の電装化など、世の中は今、急速にIT化・自動化が進んでいる。中でもここ数年、日本では冷蔵庫やエアコン、炊飯器などの、いわゆる「白物家電」の電装化が目覚ましい。
多機能で高機能、高付加価値の商品を求めるのは、消費者にとっては当然の欲求だ。最近では、掃除機と空気清浄機が合体した、三菱電機のコードレスクリーナー「インスティック」のように、家電と他の家電や家具などの機能を合わせた「合体家電」も人気を集めている。そんな合体家電の中には、洗濯物を入れるだけで、ロボットアームが綺麗にたたみ、人工知能(AI)が衣類の特徴を覚え、家族ごとの棚に分別してくれる「ランドロイド」なる全く新しい家電なども登場している。これを発売したセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ社は、さらに2018年末の発売を目途にパナソニックと共同で洗濯乾燥機と融合させた商品を開発している他、20年以降には、大和ハウス工業とも共同で、室内ビルトイン型のランドロイドを開発する計画も発表している。
日本電機工業会(JEMA)が発表した2016年の白物家電の国内出荷額を見てみると、前年比4.5%増の2兆3028億円と3年ぶりにプラスに転じており、その好調ぶりがうかがえる。このまま好調を維持し、高機能で付加価値の高い商品開発が進めば、日本の経済にも大きなプラスになることはもちろん、近年、中国などの新興国が勢力を強めてきていた世界の家電市場において、日本のシェアを取り戻すことも期待できるだろう。
日本ブランドとして忘れてはならないのが、高機能家電の肝ともいえる、内蔵している電子部品の性能と品質だ。いくらアイデアに富んだ高機能商品でも、すぐに潰れてしまうようなものだったり、やたらと電気代のかかるようなものではお話しにならない。もちろん、安全面に関しては言わずもがなだ。日本の家電製品の未来を支えるのは、やはり信頼性の高い商品であることが最低条件となる。
しかし、新しい商品を開発するためには時間もかかるし、経済的な負担も大きい。ましてや、これだけアプリケーションが多様化する中、開発サイクルも短期化しており、開発メーカーとしては、いかに迅速に、安全かつ正確に、さらにコストを抑えて開発できるかという、いくつもの課題を抱えているのが現状だ。
こういった問題を解決するのも、やはり日本の技術力となる。
例えば、電子部品大手のロームのグループ会社であるラピスセミコンダクタは、安全性を考慮しつつ開発にかかる時間・コストを削減したいとの要望に応え、アプリケーションの動作確認が簡単にできる開発ツールとして白物家電やキッチン周りの小型家電、産業機器に最適な16ビット汎用マイコン「ML62Q1000シリーズ」のスタータキット「SK-BS/AD」2機種を開発、販売を開始している。
同キットは、簡単にマイコンのアプリケーションの動作確認や評価をすることができるだけでなく、「安全機能」を追加しているのが大きな特長で、マイコンに生じる不足の事態から機器やシステムを守ることが可能になるという。
我々、一般家庭のエンドユーザーは決して目にすることの無い技術だが、最新の家電製品の好調の陰に、このような日本の縁の下の技術力があることは忘れないようにしたいものだ。そしてこのような高い技術こそが、家電製品に限らず、世界の市場で日本製品が復興する原動力となるだろう。(編集担当:石井絢子)