Kaspersky Lab、同社を訴えたパテントトロールに5千ドルを支払わせる
2017年9月2日 21:11
Kaspersky Labが特許侵害で同社を訴えたパテントトロールWetro Lanに対し、訴訟を取り下げたいなら金を支払えと逆に要求。5千ドルを支払わせたそうだ(Nota Beneの記事、Ars Technicaの記事、The Registerの記事)。 問題の特許US Patent 6,795,918(918特許)は受信したデータパケットから送信元や宛先、プロトコル情報を抽出してユーザーの変更不可能な判定ブロックを生成し、フィルタリングに使用するというもの。これは出願された2000年には既に広く使われていたネットワークファイアーウォールの仕組みそのもので、EFFが2015年6月にStupid Patent of the Monthに選んでいる。918特許は発明者が維持費の支払いをやめ、2012年9月に失効しているのだが、2015年に設立されたばかりのWetro Lanが買収。特許侵害に対する補償を6年前までさかのぼって請求できるという仕組みを利用し、ファイアーウォール技術を使用する企業を訴え始めたそうだ。多くの企業は訴訟になるのを嫌ってWetro Lanに賠償金を支払っていたらしい。 Kaspersky LabがWetro Lanから918特許侵害の通知を受けたのは昨秋で、高額な賠償金を支払わなければ訴えるという内容だったという。Kaspersky Labがパテントトロールには決して屈しないという姿勢を示したため、Wetro Lanはテキサスの連邦地裁でKaspersky Labを提訴する。しかし、訴訟は和解に持ち込むための手段だったとみられ、Kaspersky Lab側が訴訟の準備を進めていることを知ったWetro Lanは和解金額を6万ドルに減額、その後1万ドルまで減額したそうだ。 訴訟が継続すればそれだけ費用がかさみ、敗訴すれば被告側の費用も負担することになる。しかし、訴訟を取り下げるには原告・被告双方の合意が必要になる。Kaspersky Labはこれを逆手に取り、訴訟取り下げに合意してほしければ1万ドルを支払うようWetro Lanに要求する。2週間後、2千ドルへの減額を求めてきたWetro Lanに対し、Kaspersky Labは最終提案として本件で2度と訴えないことを条件に5千ドルという金額を示す。Wetro Lanはこの提案を受け入れ、判事が8月28日に棄却命令を出している。 Kaspersky Labはパテントトロールに対し、「弾丸が尽きるまで戦う、彼らの弾丸が尽きるまで」という姿勢で挑んでおり、法廷では5戦5勝。和解した23件でも金銭を支払ったことはないという。5千ドルは今回の訴訟に掛けた費用と比べてわずかな金額ではあるが、逆に支払わせたのは初めてとのことだ。