乃木坂最年長 新内眞衣の「お調子者力」

2017年8月25日 16:56

 山口百恵さんが引退したのは21歳のときのこと。前田敦子がAKB48を卒業したのも21歳のとき。そんな21歳以降になって、アイドルとしてデビューし、国民的アイドルの地位にまで登りつめた人というのは、記者が知る限り、元モーニング娘。の中澤裕子(24歳デビュー)ぐらいしか知らない。

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 しかも、中澤はアイドルではなく、あくまでアーティスト志望として、『シャ乱Qロックヴォーカリストオーディション』に参加したのであり、アイドル活動を目指していたわけではない。

 さて、そんな状況を踏まえて、21歳になって“アイドルグループ”のオーディションに合格し、今やトップアイドルの選抜常連に手をかけようとしているメンバーがいる。それが、乃木坂46の2期生、新内眞衣(現在 26歳)である。大学卒業年次、乃木坂のオーディションに合格しながらも、第一志望企業の最終面接を控えていた彼女は、運営や周囲の計らいで、アイドル界初のOL兼任アイドルという肩書を引っ提げてデビューしている。

 こう書くと、いかにも鳴り物入りで入った超大物みたいな印象になるかもしれないが、かつて雑誌モデルオーディションファイナリストという経歴こそあれ、芸能活動をしてきたわけではなく、どちらかと言えば地味で普通の大学生活を送っており、乃木坂2期生の中でも、堀未央奈や北野日奈子のようなキラキラアイドル感とか、伊藤かりんのようなけれん味があるわけでもなく、“2期生最年長の綺麗で落ち着いたお姉さん”といった印象が多かったはずだ。

 初期のネットでは、「美脚を活かしたエロ担当」などとも言われていたが、実際は12th『太陽ノック』で選抜入りするまでは、アンダー常連で、2期生のまとめ役兼先輩メンバーとのパイプ役であった。

 そんな彼女が、どうして個性豊かな乃木坂で、しかも、強力な3期生も入ってきて熾烈さを増す選抜争いを潜り抜け、選抜常連になれたのか?そこには、「天」「地」「人」の3つの要素があった。

 まず、「天」。

 乃木坂の最年長といえば、岩瀬佑美子が卒業後は深川麻衣になっていたが、その深川、さらに年長組の一角、橋本奈々未さんらの卒業が取りざたされて、「お姉さんキャラ」の需要が取りざたされるタイミングであったこと。2期でアンダー経験が長く、知名度が高くなかった新内には、これまでのお姉さんキャラにはない、新鮮さ、未知数の魅力が期待された。

 さらに、乃木坂全体が高齢化して、多少のシモネタや大人のジョークが求められるようになってきたときに、それに対応できるメンバーは非常に貴重になってきていた。

 次に「地」。

 彼女のブレイクの突破口になったのは、ラジオ番組である。彼女がOLとして働く会社はニッポン放送系列だが、彼女を最初にレギュラーに抜擢したのは、2015年3月に『OL兼任アイドル新内眞衣のまいちゅんカフェ』という番組を作ったBayFmであり、そこでの落ち着いた語り口が、乃木坂ファン以外の深夜族にも好評。

 そして1年後、ニッポン放送の『オールナイトニッポンZERO』の水曜パーソナリティーに抜擢される。ここでは、どちらかというと落ち着いた感じではなく、ヤンキーキャラであるとか、実は雑な性格であるとか、画伯ぶり(イラストが致命的に下手)など、なかなか表に出てこなかった素(?)のキャラが垣間見えてくる。

 さらに冠番組である『乃木坂工事中』では、彼女のOL生活に密着した映像が作られ、水泥棒というキャラまで定着。この当たりから、じわじわと新内の知名度と好感度が上がり始め、握手会などの人気にも反映されはじめた。

 最後に「人」。

 直接、彼女にインタビューしたわけでもないのに、ある意味失礼な言い方になるのかもしれないが、新内眞衣という人は、社会人経験もあり、年齢も上で、穏やかで礼儀正しい常識人であると同時に、歴代の乃木坂メンバーの中で、誰よりも「お調子者」なのである。

 乃木坂のお調子者といえば、秋元真夏や松村沙友里というイメージがあるかもしれないが、彼女たちは、ある意味空気を読んで、自分に与えられたキャラをその場でぱっと演じることができる能力が高いのであって、その「あざとさ」が一種のキャラになっている。

 しかし、新内眞衣の場合、ナチュラルなお調子者なので、ラジオのトークでガラが悪くなり、どっきりでキレ、番組で無意識のドヤ顔を披露してしまい、そこを突っ込まれて狼狽するところまでがワンセットなので、あざとさを感じるどころか、「しっかり者がうっかり見せるお調子者感」がファンや視聴者の親しみを誘ってくる。

 メンバーの能條愛未は、名うてのバラエティー巧者が「あざとい」と言われる行為を、新内がすることを「欲しがり」と呼び、イメージを明確にしてくれた。

 いずれにせよ、オーディション合格時の期待以上に、彼女がメンバーに愛され、スタッフに愛され、ファンから愛されるようになったということは、すべてのメンバー、いやアイドル全員にとって、大きな希望となるだろう。

 現在、ファンの一部には、過剰に乃木坂の2期生を不遇扱いして、自己憐憫に浸るあまり運営を攻撃する姿勢も散見されるが、新内のように、あまり多かったとは言えないチャンスを、確実にものにすることで、分厚い選抜の壁を超える可能性もまだまだ残されているのだ。

 ちなみに、彼女に匹敵する「お調子者力」を持つメンバーが、乃木坂にはもう一人いる。

 現在はさすがに落ち着いてしまった感もあるが、まだ、乃木坂がデビューしたばかりの頃、年下メンバーの身体(特にお尻)を触りまくり、楽屋でいきなり自分の胸をさすり始め、レッスン中の他のメンバーの歌をふり付きで歌い始め、スカートの中にメンバーを住まわせ、大きなリアクションで喜怒哀楽を表現していたくせに、そこを指摘されると泣きそうな顔で恥ずかしがっていた白石麻衣というメンバーである。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

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