三菱ケミカルの炭素繊維強化プラスチック アウディのルーフに採用

2017年8月24日 07:58

 三菱ケミカルは23日、炭素繊維強化プラスチック(CFRP : Carbon Fiber Reinforced Plastics)が、Audi A5シリーズのトップモデル「RS 5 Coupé」に採用されたと発表した。ドイツを中心とする欧州の自動車市場では燃費規制やCO2排出規制の強化を背景とした車体軽量化への関心が高まっており、高い強度と軽さを併せ持つCFRPの自動車部材を採用する動きが加速しているという。

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●炭素繊維とは

 富士経済が3月に発表した市場見通しでは、2030年までの炭素繊維の市場規模は2015年比4.0倍の4兆9058億円に拡大する。

 炭素繊維は、日本企業の地道な研究によって開花した先端素材である。東レ、帝人、三菱ケミカルなど日本企業で6割強のシェアを持つ。

 CFRPの比重はアルミニウムの約6割と軽量。鉄を上回る高剛性・高強度を持ち、振動を早く減衰する。また、銅相当の熱伝導率を持ち、熱膨張率も低い素材である。これら特性から、航空機、風力発電の羽根、ゴルフクラブ、ロケット、高級自動車などに採用されている。

 自動車業界では、コスト面から高級自動車の採用に限られていたが、燃費規制やCO2排出規制の強化からCFRPの本格採用は加速すると予測する。今回はトヨタの量産車プリウスへの採用に次ぐ、アウディの採用であり、予測確度は高いであろう。

●CFRP部材の成形技術

 最も一般的な成形加工法は、低圧下で長時間かけて硬化させるオートクレーブ工法(AC工法)であり、抜群な強度が得られるが、量産には不向きである。

 量産には、ハイサイクルCFRP成形工法が注目されており、RTM(Resin Transfer Molding)工法とPCM(Prepreg Compression Molding)工法がある。三菱マテリアルは、成形したCFRPの物性がAC工法で成形したものと同じ性能を示すPCM工法を用いる。そのため、RTM工法に比べて、試作時は安価な型を使用するAC工法で試行錯誤を行い、量産時に高価な金型を使用するPCM工法に切り替えることができるという。

●CFRP部材の量産成形(三菱マテリアル、PCM工法)のテクノロジー

 三菱マテリアルが独自に開発したCFRP部材の量産成形技術であるPCM工法は、積層したプリプレグ(樹脂を含浸させたシート状の炭素繊維中間基材)をプレス機で圧縮成形し、約5分のサイクルタイムで、自動車向け部材の量産を可能とする。また、成形品の表面の平滑性が高いためアウターはクラスA塗装が可能で外板部材としても活用できる。

 品質に対する要求レベルが非常に高いアウターを塗装ではなく、欧州での人気があるカーボン織物仕様のルーフを成形するように、PCM工法を改良したという。

 アウディでの採用の決め手は、40%の大幅な軽量化を実現し、運転性能が向上した点に加えて、アウターをカーボン織物仕様とし高品質で魅力的な意匠性を兼ね備えたルーフの量産化を実現できた点が高く評価されたという。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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