北原里英が最後まで貫く自分らしさ
2017年8月23日 20:16
8月21日、NGT48の北原里英がNGT48お披露目2周年ライブで卒業を発表した。
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経歴的(5期生)にも、年齢的にも、卒業はおかしくないということで、あまり大きな話題になってはいないが、彼女の存在が如何にAKBというグループにとって大きかったかというのは、前田敦子や高橋みなみに勝るとも劣らない。それでも、最後までNGTの本拠地での発表、新潟のファンの前での発表にこだわり、静かに卒業を発表したのは、いかにも彼女らしいと言わざるを得ない。
グループアイドルは、3期生がキーポイントになることが多い。
モーニング娘。も、AKBも、乃木坂も、いわゆる、ゼロから立ち上げたメンバーはレジェンド視されるようになり、3期生からは、先輩たちが敷いたレールに乗ってきたメンバーと受け止められて、本人同士はともかく、ファンは対立しがちだ。
そしてAKBは4期から、いわゆる研究生制度を立ち上げ、摩擦の緩和を図ったわけだが、その研究生として経験を積み5期生では宮崎美穂に続き2番目に昇格を果たした。
この5期生というのは、かなり期待された期であり、北原・宮崎・指原莉乃・仁藤萌乃はラジオ番組で頭角を現し、冠番組への露出も一気に増加。さらに第1回のじゃんけん大会優勝と準優勝の内田眞由美、石田晴香、現在ジャカルタにいる近野莉菜、AKBらしくない正統派美人の中塚智美と次世代エース候補の巣窟と呼ばれた黄金期でもあった。
そんな中での北原の特徴は、常識人であり、笑いのセンスもあり、コミュニケーション能力が抜群だったところ。
とかく個性派……元祖クソガキやら、ヘタレヲタやらヤンキー疑惑やらと問題児揃いの5期生で、先輩からも親しまれ、後輩からも慕われて、同期からも頼られるという有能さで、彼女がいなければ指原莉乃の大ブレークはなかっただろう。
その実績が、いい意味でも悪い意味でも、AKBでは買われてしまい、困ったときの「きたりえ&もっちー(4期生 倉持明日香)」という言葉が生まれるほど、MCやトークの仕切り、代打屋としての成功率を求められてしまった。
その延長線でSKEへの兼任、NGTの兼任‐移籍と、まさにグループを股にかけ、難しい仕事を任されて、それに応えてきちんと結果を出してきたのだから頭が下がるが、彼女が志していた女優としての実績は、思うようには積めなかったのが(あくまでも記者の個人的な物だが)印象なのだ。
彼女の初期を知らない人に、是非見て欲しい映像がある。
それは、第1回じゃんけん大会のときに作られた個人密着の「リアル」という映像なのだが、そこで北原は自分の顔が嫌いだとカメラマンに呟き、何回か言葉を交わした後、本人も、そして撮影していたカメラマンまでを泣かせてしまった映像だ。
いつでも明るく、なんでもそつなくこなす優等生だった等身大の少女の、生々しい葛藤があますところなく写されており、おそらく数あるAKB関連の映像の中で、最も価値ある映像ではないかと思っている。
様々なしがらみの中で、涙も笑顔も育んできた、静かで偉大なアイドルが、今後どのような活躍を見せてくれるのか、非常に楽しみである。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る)