「睡眠は脳を育てる」幼児の眠りを変えるアプリ開発

2017年8月23日 08:13

 「寝る子は育つ」というが、睡眠は子どもの良好な発達のために非常に重要な要素である。しかし、わが国の乳幼児の総睡眠時間は諸外国と比較して著しく短く就寝時刻も遅い傾向にあり、こういった傾向に影響を与える要因として社会・文化的な背景による睡眠習慣の違いや生活環境や養育行動の変化などが挙げられる。

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 睡眠中には成長ホルモンが大量に分泌され、骨や筋肉の成長を助長して新陳代謝を活発する。睡眠が不足すると注意欠如・多動症の危険因子となるほか、免疫力の低下、肌劣化など様々な人体への悪影響のみならず、性格や指向性など精神的な面に対する影響についても大きく懸念されており、教育の一環として社会的に良質な睡眠が求められているといえそうだ。

 そんな中、大阪大学大学院(連合小児発達学研究科)の谷池雅子教授ら研究グループは、睡眠の専門家グループ(小児科医・歯科医・臨床心理士・臨床発達心理士)と保護者がスマホで双方向的にやり取りできる“幼児の眠りに特化したアプリ”の開発に成功した。

 「ねんねナビ」は、幼児の眠りの問題に特化、アプリ内で専門家に相談ができ、指導を受けられる(タブレット端末でも使用可)。幼児の睡眠習慣に対し、長年小児睡眠に携わってきた専門家が個別に助言するアプリで、世界初となる。睡眠改善への拠点として、保護者への睡眠教育を促す動画コンテンツの配信や、アプリと連動して実際の睡眠のデータ(活動量計)とも連携が可能なシステムとなっており、実践的なアプリとなっている。

 このアプリは自治体での実装の前段階として、研究機関内で予備検討を行っており、10組の親子へのアプリ試行などにおいて、「アプリが使いやすい」「子供が自ら寝室に向かうようになった」などかなりの好評を得ている。システム上の問題も無く、驚くことにすべての子供の眠りに何らかの改善が認められ、その有効性が確認されている。社会実証については、今秋から東大阪市の保健センターにて開始する予定で、1歳6か月児健康診査に来所した幼児で、就寝時刻が遅い、または睡眠時間が短い子どもの保護者に対して、1年間の研究協力を依頼している。本格的な運用はまだ先だが、今後はAIの採用も視野に入れており、多人数かつ同時対応が可能となっていく予定だ。自治体での睡眠啓発・指導に多大な力を発揮することが期待されている。(編集担当:久保田雄城)

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