「病は気から」は何故起こる?分子メカニズムからの解明
2017年8月20日 17:56
ストレスは心身に悪く、万病の元である。そのことは経験的にはよく知られているが、その分子レベルでのメカニズムとなると、ほぼ未知であった。しかし今回、北海道大学などの共同研究グループは、慢性的なストレスをかけたマウスに病原性免疫細胞を移入すると、突然死が引き起こされるという現象を明らかにした。
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北海道大学の村上教授は、以前、自己免疫疾患のマウスを用いて、重力によるふくらはぎへの刺激が血液脳関門を越える免疫細胞の集合を起こして病気の発症を招く「ゲートウェイ反射」について報告している。
今回の研究では、ストレスによる神経の活性化によって脳内の特定の血管に免疫細胞が侵入、微小炎症が引き起こされるという、新しいゲートウェイ反射が発見されたというわけだ。
この微小炎症は、通常は存在しない神経回路を結成して活性化し、消化管や心臓の機能不全を引き起こして、突然死を誘導した。この発見は、「ストレスが臓器の機能不全を引き起こす」理由に関する、世界で初めての発見であるという。
では、実際の研究を見てみよう。実験的自己免疫疾患性脳脊髄炎(EAE)のマウスを、特殊なケージで飼育することで睡眠障害の状態に置く。また別のマウスは、慢性的なストレスを与えるため、床を湿らせたケージで飼育した。
このような状態のマウスに、EAEの原因となる病原性免疫細胞(CD4+T細胞)を移入したところ、EAEの通常の症状は起こらず、マウスは突然死したという。
ところで、同じ程度のストレスを受けていても、病気になる人もいればならない人もいる。その違いは、今回の研究で示されたように、脳内の微小炎症の有無によるのかもしれない。つまり、微小炎症を引き起こすCD4+T細胞の数を調べることで、ストレス性疾患へのかかりやすさを予測できるかもしれないという可能性がある。
なお、研究の詳細は、生命科学の専門オンライン誌であるeLIFEにオンライン公開されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)