普通の会社で「採用不正」と言われても、その定義が難しい
2017年8月15日 11:39
山梨市の市長が職員採用試験での不正に関与した疑いで、逮捕されたというニュースがありました。公文書に関する不正という罪にあたるようで、市長が採用試験の合否を決めていて、この試験結果を改ざんした疑いが持たれているということです。報酬を得る目的だったのではないかという話もあります。
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これが事実だとすれば、公的な地位を利用しての私腹を肥やす不正行為で許せないことですが、この話から思ったのは、こと「採用試験」ということでいえば、民間企業ではなかなか起こりづらいものだろうということです。
これは民間企業が公正だとか清廉潔白ということではなく、そもそも何が不正にあたるのかということがあいまいな場合が多く、さらに不正をしてまで入社するほどのメリットがある会社は、世の中のごく一部の会社しかないと思われるからです。お金を払ってまで入る価値がある会社はそうそうあるものではありません。
例えば「縁故採用」といったとき、これがまったく存在しない企業は少なく、かなりの大手企業でも縁故者だけを集めた試験があったり、そのための採用枠があったりします。中小企業であれば、社長や役員の知り合いがある日突然入社してくるようなことはあるでしょう。
私が企業の採用責任者をしていた時も、やはりいろいろな人からの縁故にまつわる紹介がありました。建前では「試験を受けさせてほしい」というレベルの話ですが、紹介する人としては、どこか配慮してほしいというのが内心の本音でしょう。
これらは確かに採用基準が違っていたり、試験の内容が違っていたりしますから、ダブルスタンダードということが言えますし、通常の入社試験を受けている人からすれば不公正な感じはするでしょう。
ではこれが「不正」なのかというと、私はそうとは言い切れないと思っています。仮にその会社に入社したからと言って、ごくごく一部の超優良安定企業でない限り、その後の幸せが保証されるわけではないからです。また、企業がどんな人を採用するかは、その人にはどうすることもできない理不尽な差別でもない限り、その企業の判断しかありません。
事実、せっかく縁故で入社しても、結局会社に合わないと言って辞めてしまう人はいますし、その一方予想以上に活躍する人もいます。中には高待遇にあぐらをかいて何もしないような人もいますが、そんな分不相応な形は長くは続かず、だいたいは会社を追われてしまいます。
昨今は、ブランドがある有名企業でも経営不振に苦しんでいたりしますが、そもそもどんな企業であっても100%の安定はありません。ブランドがある会社に入社したからと言って、自分がずっと幸せなままとは限りません。
「採用不正」という言葉を聞いた時、民間企業の場合では、それが不正かどうかを決めるのは、結局はその企業の判断次第です。あくまで総合判断なので、筆記テストの点数が低い人の方が採用になったり、素晴らしいと見える経歴の人が不採用になったりします。
今回の「採用不正」については、公務員であったという特殊な事情があったからで、どちらかというと入学試験の不正に近いと思います。
この手の不正は一般的な企業ではほとんど起こらないはずですし、不正までするメリットがないはずですが、少なくとも対外的に「不正だ」などと指摘されてしまうような採用活動だけは、会社の信用のためにもしてはいけません。その点だけは心に留めておく必要があります。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。