第19回自動認識システム大賞、実用化面ではRFID技術が健闘
2017年8月2日 22:03
自動認識の技術動向は、AIが華やかに進化する一方、RFID(Radio Frequency Identification)は実用化面で健闘している。
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7月31日、テクノメディカと富士通フロンテックは、RFID検体情報統括管理システム「TRIPS」が、第19回自動認識システム大賞で、優秀賞を受賞したと発表した。医療分野でのRFIDの実用化事例である。自動採血管準備装置で採血管に貼付された検体管理用RFIDラベルと読取装置を用い、医療施設内の検体トレーサビリティの品質を確保した上で、検体管理の業務効率化に貢献する。従来のバーコードと比べ、検体読取時間を従来の約60分の1となる4秒に大幅短縮したという。「TRIPS」は、2012年から全国の大学病院、基幹病院を中心に52施設で採用され、検体管理用RFIDラベルの累計利用枚数は数千万枚に達しているという。
●RFID(Radio Frequency Identification)技術とは
自動認識には、バーコード認証、生体認証(指紋や虹彩)、画像認識、RFIDがあり、身の周りで実用化されている。特にAIを用いた画像認識の新システムのニュースには、事欠かない。他方、安定した実績を伴う実用化では、RFIDの応用が健在なようだ。
交通機関で使うICカードはRFID技術を使用している。RFIDの特徴は、非接触(無線通信)で、データの読取、書換が可能なことである。無線通信には、電波や電磁界を用いて交信する。また、複数のRFタグの一括の読取や書換機能が魅力的で、さらに小型・軽量でセキュリティにも強いことも重要な要素である。
●RFID 検体情報統括管理システム「TRIPS」の特徴
自動採血管準備装置をRFID対応にし、上位システムと統合したものが「TRIPS」である。バーコードからRFIDへとシステムを進化させたことにより、検体100本の読取時間を5分から4秒へと短縮したという。RFタグの一括読取は、検体100本を専用のリーダーに置くだけであり、熟練度の要素を排斥し、作業負担を均一化した。
臨床検査業務において、検体のトレーサビリティの厳格化は、検体の紛失、採血患者の取違えといった医療事故、インシデントの防止に有用であり、RFID技術で実現した。
●RFID(テクノメディカと富士通フロンテック、「TRIPS」)のテクノロジー
「TRIPS」は、液体の影響を受けづらいRFIDのアンテナ構造と下方向への指向性を強化する形状を採用している。また、RFIDリーダー装置では、小型アンテナを複数配置することで読取面全体の電波出力を安定化させた。加えて、「TRIPS」に特化したRFID対応自動採血管準備装置の製品を新たに開発し、安定したRFタグ読取を実現したという。
テクノメディカの自動採血管準備装置の国内シェアは約90%に上り、全国で月間1,000万人以上の採血業務に活用されているという。
●大賞「手ぶらチェックインサービス」もRFID技術を活用
大賞は、トッパンフォームズの「手ぶらチェックインサービス」が受賞した。未だプレスリリースはないが、宅配会社と航空会社がRFID内蔵のRFタグを手荷物に付け、共同利用する連携を実現したと推測される。顧客が自宅で手荷物を宅配会社に預けると、手荷物は空港で搭乗便に積み込まれ、渡航先の空港で受取る。
なお、もう一つの優秀賞は、NTTドコモの「画像認識AIを活用した商品棚認識システム」が受賞している。(記事:小池豊・記事一覧を見る)