理研ら、DNAが規則正しく織り畳まれていないことを証明
2017年8月2日 11:27
生物のゲノムDNAは、全長2mにもなるものが折りたたまれることで、細胞内に収められている。従来、細胞内のDNAはらせん状に巻かれて階層構造を作っていると考えられてきた。近年、国立遺伝学研究所の前島一博教授らにより、定説のような規則正しく折りたたまれた構造が存在しないことが実験などから提唱されていた。しかしながら、実際の様子を捉えた証拠はこれまでなかった。情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所・野崎慎研究員・前島一博教授らと大阪大学・永井健治教授、理化学研究所・岡田康志チームリーダーの共同研究グループは、光学顕微鏡の分解能を超える超解像蛍光顕微鏡を構築することで、生きた細胞内におけるDNAの収納の様子を観察することに世界で初めて成功した。
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DNAは「ヒストン」という棒状のたんぱく質に巻き付くことで直径約11nm(ナノメートル)の「ヌクレオソーム」を作る。このヌクレオソームが規則正しく折りたたまれることで直径約30nmの「クロマチン繊維」を形成し、さらにらせん状に巻かれて細胞の核内に収納されているという説が一般的だった。近年の説は規則正しいクロマチン繊維が存在せず、不規則に折りたたまれているというもの。従来の可視光を用いて観察するタイプの電子顕微鏡では、200nm程度の大きさのものを観察するのが限界(光の回折限界)だったことからクロマチン繊維の確認は困難だった。今回共同研究グループはヌクレオソーム1個1個を観察できる超解像蛍光顕微鏡を構築し、細胞内のDNA収納の様子の観察に成功した。
観察の結果、DNAは不規則に折りたたまれ、「クロマチンドメイン」とよばれる小さな塊を形作っていることがわかった。クロマチンドメインは核内でダイナミックに動き、細胞増殖、細胞分裂を通じて維持されている。このことから、クロマチンドメインが遺伝情報の検索・読み出し・維持に重要な染色体ブロック(機能単位)として働くことが示唆される。
本研究の結果によって、遺伝情報がどのように検索され、読み出されるのかについての理解がさらに進むとともに、DNAの折りたたみの変化で起きるさまざまな細胞の異常や関連疾患の理解につながることが期待される。 (編集担当:久保田雄城)