疲弊する教育現場、教員の過酷な勤務実態とは

2017年7月31日 16:06

 文部科学省の調査によって、「過労死ライン」を超えた残業を強いられている教員が多くいることがわかった。また、非正規教員の勤務実態はかなり過酷で夏休みなどの授業がない時には、無給になってしまうということもわかった。

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 ブラック企業と呼ばれる企業が、現在の社会にも多く存在しているが、その中でも安定しているように見える教員の勤務実態は特に過酷だ。熱心なやる気をもった教員を利用しているといっても過言ではないかもしれない。

 文化省の発表では、過労死ラインと呼ばれる月80時間を超える残業時間を強いられる環境は公務員の中でも特に教員に多く発生しているという。過労死ラインを超える残業を強いられている教員は小学校の教員では34%、中学校の教員ではなんと半分以上の57%であった。

 この過労死ラインを超えるほどの残業が増える背景の1つとして部活動がある。例えば野球部の顧問の場合には、授業が終わった後は19時頃まで野球部の部活動。さらに、土日は毎週朝9時から夕方18時まで部活で拘束される。雨が降っても休めず、グラウンドを使用できるか朝早く確認しなければならない。これが毎日続くのである。そのため、教員のほとんどができるだけ部活動の顧問を引き受けたくないと答えている現状がある。

 しかし、それによって特定の教員にだけ負担がかかる恐れがあるため、暗黙の了解で部活動の顧問は全教員が担当することになっている。2016年には、部活の顧問を全教員が受け持つことを原則とする中学校は87.5%という結果となり、教員になったらほぼ部活動を受け持つのが確実だと考えたほうが良い。

 だからといって、それで給料が上がるわけではない。それには「給特法」が影響しており、公立の小中学校教員は法律で「時間外勤務手当・休日勤務手当は支給しない」と明記されてしまっているのだ。

 さらに、現在では少子化の影響から正規教員を減らして非正規教員を増やすという対策が行われたことが原因で、無給で働く教員が増えているという。非正規教員の給料は「時間単価」×「勤務コマ数」となっている。つまり、非正規であるため授業の時間だけが給料に値する計算になっているのである。

 しかし、これでは授業がない夏休みや部活動などは一切給料が発生しない扱いになってしまう。特に、先生という仕事にやりがいを感じている・充実していると意欲的な教員ほど無給の時間は多くなっていく。教員の「やりがい」だけではどうにもならないという事態に、国民からも怒りの声があがっている。

 文科省の意見は現状でも「教員という仕事の重みややりがいを発信していきたい」という。やりがいを感じて取り組んでいる教員がより損してしまう、そんな教育にお金をかけない国でいいのだろうか。このような過酷な環境を改善し、よりよい教育の未来を作っていかなければならない時がきたのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)

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