スマホ子守と絵本 少子化日本の親子に求められるコミュニケーションの10分
2017年7月30日 21:39
厚生労働省が2016年12月に発表した人口動態統計年間推計によると、2016年生まれの子供の数(出生数)は98万1000人で、動態統計を取り始めた1899年以降初めて年間出生数が100万人を割ったことが明らかとなった。前年よりも2万人以上も減少しており、少子化の加速に拍車がかかっている。ところがその一方で、育児に対する悩みや問題は増加しているようだ。児童虐待が年々深刻化しており、2015年度には全国208か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数が10万3千件を超え、その数はさらに増加傾向にある。これは、我が国の将来にとって由々しき問題だ。
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近年の子育てを象徴するかのような話題に「スマホ子守」というものがある。現在子育て中の親ならば、電車やバス、車などでの移動中や、病院、銀行などの待ち時間、家事で忙しいときなど、子供がぐずった時にスマホを渡して遊ばせた経験のある人は少なくないだろう。最近は、子供向けのスマホアプリが充実していて、娯楽的なものから、知育ゲームや英語教育的なものまでも充実している。何より、スマホを与えておくだけで子供たちは泣き止み、スマホの画面に集中して大人しくなってくれるので、視力低下が気になるものの、ついつい渡してしまう。スマホに子守を任せてしまうのだ。
しかし、問題は視力低下など健康上のトラブルだけでは留まらない。
親子共にスマホに夢中になってしまうことで、親子のコミュニケーションが確実に減ってしまう。これが子供の成長に大きな影響を与えてしまうのだ。
赤ちゃんや幼児は、保護者がたくさん話しかけることで言語能力を伸ばしていく。また、家族や友人との会話やコミュニケーションを通して、情緒の発達や社会性の基礎を身につけていくものだ。これが疎かになると、人間関係を築くのが難しくなる。情緒が不安定になり、親の言うことを聞かなくなる。子供が言うことを聞かないと、親の方もストレスが溜まり、ついつい声を荒げてしまったり、手が出たりしてしまう。それがエスカレートすれば、虐待に発展してしまうこともあるかもしれない。
スマホ子守が一切悪いと言いたいわけではない。状況によっては、必要な時もあるだろう。
しかし、必要な時以外は、たとえ面倒でも、疲れていても、親子のコミュニケーションは惜しむべきではない。話すことが無いというのなら、絵本を読んであげるだけでいいのだ。ただ、どんな絵本を選べばいいのかわからない人も多いかもしれない。本屋や図書館に行けば溢れんばかりに絵本は置いてあるが、いざ読んでみると、難しいものだったり、単純に面白くないものもある。
絵本選びに迷った時は、絵本コンクールの受賞作を目安にしてみるのも手だ。
有名な絵本コンクールでは、小学館が発刊する読み聞かせお話雑誌「おひさま」主催の「おひさま大賞」や、講談社の「講談社絵本新人賞」など、幼児・児童を読者対象とした絵本のコンテストは頻繁におこなわれている。大賞を獲った作品は、それだけのレベルが保証されているのは言うまでもない。また面白いだけではなく、最近の受賞作であれば、時代にも合っているので、子供たちにも受け入れられやすいはずだ。
他にも魅力的な絵本コンクールは多い。例えば、「はちみつ」や「ローヤルゼリー」などのミツバチ産品の製造販売で知られる山田養蜂場が催している、ミツバチをテーマにした「ミツバチの絵本コンクール」なども注目したい。同社ではこれまで18年間にわたって、ミツバチをテーマに「自然環境の大切さ」「社会とのつながり」「生命の尊さ」を表現した作品を募集する「ミツバチの童話と絵本のコンクール」を開催してきたが、今年はそれをリニューアルして「ミツバチの絵本コンクール」としてスタートし、現在、作品を募集中だ。
絵本を読むと、子供は目を輝かせ、想像力を働かせる。その時に見せてくれる表情や笑顔は、スマホの画面を覗いている時には決してみられないものだ。どんなに仕事が忙しくても、絵本を一冊読む時間は、幼児向けなら、せいぜい10分程度。そのたった10分が、親子の仲を変えてくれるかもしれない。(編集担当:石井絢子)