本当に優秀な部下がいたら、あなたはどこまで認められるか
2017年7月27日 17:12
いろいろな会社の経営者や役員の方々と話していて、最近よく聞く話に「経営者マインドを持った人材がいない」というものがあります。言葉の通り、広い視野で仕事全体を回すことができ、結果を出せる人ということで、そういう人がぜひ欲しいけれども、なかなか出会うことがないと言っています。
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自律人材、自発人材、積極人材ということも言われますが、たぶん言いたいのは同じようなことで、自分で考えて自分で行動できる人材、要は「放っておいても自分で何とかできる人」ということでしょう。単にスキルや知識があるということだけでなく、それを発揮する行動が伴っているということで、それを兼ね備えた人が“優秀な人材”ということになるのだと思います。
こんな人材はめったにいないというのは間違いないことですが、もし仮にこんな優秀な経営人材が会社に入ってきたとして、その人の力を100%活かせるのかといえば、これもまた難しい問題です。
ある社長にこの質問をしたところ、しばらく考えてから「努力はするけど難しいかもしれないね」とおっしゃっていました。その理由は「私(社長)も含めて、人間は自分よりも優秀な人を、本音ではなかなか認められないから」ということでした。私も正直そう思います。実際に活かせるかどうかには、やはり会社の器、もっと身近な上司の器が大きく影響してきます。
例えば経営人材、自律人材、自発人材、積極人材などといった人材像のキーワードが挙げられていますが、これには前提があります。それは、“会社や上司が認めた範囲の中で”、経営を考え、自律的、積極的に動けということです。もし仮に会社のやり方や上司の判断が良くなかったとしても、その枠からはみ出して行動することはできません。「自律」といいながら自分では決められず、「自発」と言いながら自分の判断だけでは行動できないということが起こってきます。
また、これはお互いのレベルはともかくとして、自分よりも能力が劣っている人が上司になると、部下の立場としては大変なストレスになります。上司がその能力差を認めてくれて、権限移譲を大きく進めてくれればまだよいですが、そうなることは非常に稀です。やはり上司は、自分の上司としての立場を守りたいと思うものです。
優秀な人材であればあるほど、能力不足の上司や器が整っていない会社のせいで、自分の考えややりたいことが制限されたとしたら、たぶんその会社には早々に見切りをつけてしまうでしょう。
つまり、優秀な人材が、もし本当にその人が会社に入ってきたとしても、会社全体にそれ活かそうという心構えがなければ、良い効果を生むことはできないということです。
米IT企業のグーグルでは、採用基準の一つに「自分より優秀で博識な人材を採用せよ」というものがあるそうです。ここには人材レベルが停滞していては、企業としての成長が望めないという認識が込められています。自分以上のレベルの人材に、自分以上の働きをしてもらわなければならないということですが、この実現のためには、上司が自分より優秀な部下を、認めることができるかどうかにかかっています。
これは、多くの場合で簡単にはいきません。社長を先頭に、自分よりも経営センスがある人がいたとしても、なかなかそれは認められないでしょうし、結果としてそういう人材が活躍できる前につぶしてしまっていることもあるでしょう。ただ、それは人材レベルの停滞もしくは衰退であり、企業としての成長は望めません。
成長過程にある伸び盛りの会社では、一般的に後から入社してくる人の方が優秀なことが多いです。会社が成長すれば、それに合わせて入社を希望する人のレベルも上がっていくからです。
こういう人材を活躍させるには、会社がそのための環境を作らなければなりませんし、特に上司が優秀な部下をどこまで認められるかということにかかっています。
本心からそれができる上司のいる会社は強いと思います。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。