銀河系中心部で新たな2つの「野良ブラックホール」発見か

2017年7月23日 08:05

 慶應義塾大学の研究グループは、天の川銀河(我々の太陽系が属する銀河系の別名)の中心核である「いて座エー・スター」周辺の分子ガスについて電波分光観測を行ったところ、2つのブラックホールの存在可能性を強く示唆する観測データが採取された、との発表を行った。

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 そもそも、我々のいるこの銀河系、天の川銀河は、どのような構造を持っているのだろうか。簡単に説明すると、この太陽系が太陽を中心に構成されるように、天の川銀河は、超大質量ブラックホールを中心に構成されているのではないか、というのが、最近の天文学における主流の見解である。

 いて座エー・スターは、この太陽系から約2万6,000光年の距離にある。理論的には、そこにある超大質量ブラックホールは、太陽の400万倍の質量を持つと推定されている。が、ブラックホールの観測は原理的に困難であるため、実際に発見されたわけではない。

 銀河系には無数の、億単位のブラックホールが存在すると考えられ、その多くは「野良ブラックホール」として、いて座エー・スターの周囲を飛び回っているのではないかと考えられている。ただ、地球科学の現状で、天の川銀河内に発見されているブラックホール候補天体は、わずか60個程度に過ぎない。

 今回の野良ブラックホール発見についても、ブラックホールそのものが観測されたわけではない。ただ、いて座エー・スターから20光年ほどの距離のところに、異常な速度で移動する小さな分子雲が2つ見つかったのである。その特異なエネルギーを生じさせる引力などを持った天体は周辺に発見できないため、おそらくはこれは巨大分子雲に飛び込んだ野良ブラックホールが引き起こした現象ではないか、と見られている。

 なお、研究の詳細は、アメリカの天体物理学専門誌『The Astrophysical Journal Letters』に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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