銀行はいつから“サラ金”になったのか?(上)
2017年7月21日 07:22
日本銀行がマイナス金利政策を導入してから1年半が経過した。金融の超緩和策にもかかわらず企業の資金需要に勢いはない。しかし、厳しい状況にある銀行の貸出業務の中で怪気炎を吐いている数少ない部門がある。銀行のホームページを覗いてみると、カードローンに入れ込んでいる姿が見えて来る。カードローンは、無担保で使用目的も自由という、かつて“サラ金”と呼ばれた貸金業者の得意分野だった。
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2000年代の初め、派手なCMや街頭でのティッシュ配りなどを強力に進め、貸金業は隆昌を極めた。貸金業者の消費者ローン残高は12兆円まで伸ばしに伸ばした。その間、グレーゾーン金利と呼ばれる金利の未整備状態を巧みに活用してまさに我が世の春を謳歌していた。
しかし舞台は突然暗転する。多重債務が社会問題化すると共にグレーゾーン高金利の借金返済に行き詰まる個人が続出した。個人の自己破産件数が過去最多の24万2千件となった03年には、貸金業者に対する世間の目が一段と厳しさを増し、大きな社会問題と化した。
06年1月に最高裁が過払い金の返還を認めた判決を下したことを契機として、貸金業法が改正された。このため、グレーゾーン金利がなくなり金利は年20%以下と明確化し、過払い金返還請求の嵐が貸金業者に吹き荒れた。
これによって貸金業者の淘汰が進み、最大手の武富士は倒産に至り、アコムは三菱UFJフィナンシャルグループの子会社に囲い込まれ、プロミスは三井住友FGの傘下で、社名をSMBCコンシュマーファイナンスに変更した。
06年度末に約1万1800社だった貸金業者は16年12月末で1876社となり、銀行系列に組み込まれた以外の業者も、金融庁が主導する金融秩序の中に収まった。
金融庁の傘の下でカードローンについて銀行と同一の業務を営むはずの貸金業者に、明確なハンディが課せられた。貸金業改正法が完全施行された10年以降、貸付額を利用者の年収の3分の1を上限とする総量規制が貸金業者に課された。銀行は適用外となり貸出額に規制上の上限はない。年収がない専業主婦であっても銀行であれば貸せる。
規制のない銀行のカードローンは急速に増加し、11年度末に消費者金融を逆転した勢いのまま、現在銀行のカードローン残高は貸金業者の2倍強にまで膨れ上がった。17年3月末は前年同月比9%増の5兆6千億円だ。