若者の果物離れからみる消費構造の変化と貧困化

2017年7月15日 14:55

 総務省が6月に発表した5月の2人以上世帯の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は28万3056円となり、物価変動を除いた実質で前年同月比0.1%減だった。マイナスは15カ月連続で、比較可能な2001年以降では最長を更新した。衣料や外食への支出低迷が目立ち、節約志向で消費の停滞が長引いていることを裏付ける結果となった。

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 消費支出の内訳では、「被服および履物」は13.1%減と大幅に落ち込み、気候の影響や節約志向の傾向はもちろんだが若者のファッションの見方に対する変化の影響も少なからず感じられた。ファストファッションブランドの台頭により“安く”“手軽に”芸能人やモデルが着用するような衣服を身につけることが可能となり過度に着飾る事はイケてない、という風潮を呼んでいる。インスタグラムなどSNSの普及による影響も大きい。現代の若者の生活環境には、画像検索を中心にリアルな「今」の情報が溢れており、常に「見る・見せる・見られる」といった関係性の中で、「積極的なおしゃれ」から「ある程度はおしゃれ」へとシフトしている。こういった“手軽さ”や“簡素化”といったいわゆるコストパフォーマンス(以下コスパ)を重要視する傾向はファッション業界に限定されたものでなく、衣食住どのジャンルでも顕著だ。

 食の業界でいえば、近年若者が野菜・果物を食べなくなってきている、との指摘がある。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」における年代別にみた果実類の摂取量では「摂取量ゼロ」が、20代で58%、30代で54%と若年層においていずれも過半数を超えている。一方、JC総研の行った「野菜・果物の消費行動に関する調査結果」では、果物を食べる頻度は、トータルで28.5%(前回29.3%)と前回に続き減少した。年齢別にみると、20代以下で『毎日』が8.7%(同20.3%)と11.6ポイントの大幅減、「週に1日未満/食べない」が57.5%(同37.2%)と20.3ポイントもの大幅増となり、野菜同様、果物も20代以下の摂食頻度の低下が目立つ結果となっている。

 JC総研の青柳靖元・主席研究員は若者の果物離れの傾向について、「年々強まっている」と語った。 果物は、野菜と異なり嗜好品の扱いを受けることも多く、その機能性や健康増進への評価、信憑性の薄さがある上に価格も安くはなく日持ちもしない。コスパだけで物事を考えてしまうと、果物を食べるメリットは少ないのかもしれない。 学生時代からコンビニを多用する生活を続け“手軽さ”に囲まれて育った世代は特にコスパに弱い。

 呑気に見られがちな若者世代だが、流動性が高い情報化社会の只中で若者なりに常に気を張って生活している。選択肢が莫大に増えるなか、周囲の流れに置いていかれまいと右へ左へと能動的に動く中で時間的・金銭的余裕も削られている。果物摂取量が年代に比例する理由はやはり「余裕」の違いなのだろうか。若者世代には今後本格化する高齢化社会に向けた社会保障制度の負担など、不安材料も多い。お金と時間の貧困化によって、若者がコスパを重要視せざるを得ない、という現状が若者を果物から離れさせる一つの要因かもしれない。 (編集担当:久保田雄城)

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