乳がん、乳房温存治療に光 3年後実用化目指す新薬
2017年7月15日 09:05
徳島大学などの研究グループが、日本で最も症例の多いタイプの乳がんである「エストロゲン依存性乳がん」を対象とする、乳房摘出を回避する治療を可能とする新薬を開発した。3年から5年程度での実用化を目指す。産経新聞が報じた。
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日本人女性における乳がん生涯有病率は、12人に1人であると言われる。その治療の要は早期発見であり、その啓蒙活動はピンクリボン運動と呼ばれている。
乳がんの主な治療法は、乳房を摘出するものと、温存するものに大きく分けられる。それぞれの治療法の選択についてなどの話は高度に専門的な話題となるためここで深くは論じないが、ごく分かりやすい問題として、乳房摘出手術は、一般論としてQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の低下を招く要素を持つ、という点に留意が必要である。
エストロゲン依存性乳がんは、女性ホルモンであるエストロゲンを栄養源としてがん細胞が増殖するタイプのがんである。日本人の乳がん患者の約7割を占めている。
発見が早かった場合は、手術後の再発や転移を防ぐため、ホルモン剤投与が選択されることが多い。ただし、ホルモン剤の投与は5~10年という長期間の投与が必要である上、薬剤耐性や副作用などの問題もある。
徳島大学の片桐豊雅教授が開発した新薬「ERAP」は、タンパク質と同じくアミノ酸でできた物質であるペプチドから作られている。これを乳がん細胞を移植したマウスに投与したところ、がん抑制細胞「PHB2」が機能を発揮してエストロゲンの経路を止め、がん細胞の増殖を抑えることができた。さらに、既存のホルモン剤と併用することで、最終的にはがん細胞を死滅させることができたという。
今後、大型動物での安全性や効果に関するさらなる研究を経て、3~5年以内の実用化を目指す。
なお、本研究の成果は、日本乳癌学会学術総会で発表される。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)