75歳以上の免許自主返納、1~5月は10万人以上 昨年大幅に上回る
2017年7月14日 08:11
3月の改正道路交通法施行で高齢ドライバーの認知症対策が強化され3か月余り。今年の1月~5月に75歳以上で運転免許証を返納した高齢者は10万人を超え、昨年の年間返納者数約16万2000人を大幅に上回るペースだ。
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また、同じ期間中の75歳以上の交通死亡事故は151件。過去10年で最少を記録した。
改正法施行の影響で、免許更新時などに行う認知症診断の医師の確保や高齢者講習の受講待ち解消などの課題も見えてきた。
警察庁によると運転免許証の自主返納の増加について「高齢者による交通事故が社会問題化し、安全運転への関心が高まったからではないか」と分析している。75歳以上の返納率トップは東京の3.18%、次いで大阪3.00%、神奈川2.63%となった。
新しい制度では、75歳以上の高齢者は免許更新時に行われる認知機能検査で「記憶力・判断力が低くなっている」と判定されると医師の診断が義務付けられる。さらに認知症と診断されると免許の取り消しの対象となる。
警察庁では改正法施行により受診対象者が年間5万人になると見込み、医師会などに依頼し、診断に協力してもらう医師を全国で約4800人確保したが、地域により医師の数に偏りがある。
また、70歳以上のドライバーには免許更新時に高齢者講習を受けることになっているが、実際に講習を担う指定自動車教習所の数は昨年末時点で1332か所あり、少子化などの影響で10年前と比べて約200か所減少している。
今年1月時点の全国の高齢者講習受講待ち平均日数は56.9日となっている。警察庁によると「運転免許試験場など警察施設での講習実施を広げていきたい」としていて、実際に警察施設での講習は27都道府県60か所で行われている。
75歳以上の交通死亡事故も1月~5月の同時期比で14.2%減少した。この10年間は年間約450件前後で推移してきたが、今年はこのペースでいくと300件台まで減少する可能性も出てきた。自主返納率が上昇し、事故も減少傾向にあるが、一方で認知機能検査の医師が不足する、高齢者講習の受講待ちなどがこれからの課題だ。(編集担当:久保田雄城)