雇用成長のシグナルは継続的な成長と連邦準備制度の動き
2017年7月10日 21:20
*21:20JST 雇用成長のシグナルは継続的な成長と連邦準備制度の動き
WellsFargoResearchTeamによると米国の6月の222,000人の雇用増加と賃金の上昇は、今後も経済成長が継続していることを示しており、FRBが現在の政策を継続する根拠となっている。しかし、現在構造的失業問題が残っていると指摘する。
非農業部門就業者数は6月に222,000人増加し、3ヶ月平均で194,000人の雇用を得た。今年の月平均雇用の増加は、2014年からの緩やかな傾向が続き、労働市場の厳しさと給与/賃金の上昇と一致している。
サービス産業での雇用は、ビジネスサービス、教育、金融、財務、観光の産業で利益を上げ、堅調に推移した。地方自治体部門は、6月に大きな利益を上げた(その理由として大学のサマースクールが関係しているかもしれない)。物品部門では、製造業の雇用は微増となり、雇用は16,000人を上回った。私たちの見通しは、第2四半期の実質GDP成長率の回復と、今年下半期に約2.5%から3.0%の実質GDP成長率の上昇です。
■賃金孤立した数字ではなく経済システムの一部
雇用の増加は、平均して労働人口の成長を上回り、それによって失業率に下降の圧力を与え、賃金には穏やかな上昇圧力をかけた。
6月の平均時給は0.2%上昇し、前年の2.5%のペースを維持した。2017年の着実な雇用の伸びが続いているにもかかわらず、この2%中盤のペースはまだ打開できていない。下降気味のインフレ率と生産性の低下から、名目賃金の伸びは制限されている。全てを考慮すると、時給の平均収入と週給の収入が改善し続けており、雇用の増加とともに、家計収入の増加を下支えしている。
長期的に見ると、賃金は労働市場の経済の基礎的条件を反映しており、それらの基礎条件は生産性とインフレを含んでいる(下のチャート。現在の経済サイクルの間、アナリストは低い生産性について繰り返しコメントしているが、インフレは連邦公開市場委員会(FOMC)の目標の2%を下回り続けている。生産率とインフレの両方が低迷し続けていることから、現在の経済の基礎的条件において、賃金が伸びていないことはまったく驚くべきことではない。
■構造的問題の持続:成長の限界
下記の長期失業率のグラフは過去30年以上の水準よりも高く、労働市場の構造的変化を示唆している。最近のオピオイド流行に関する記事や、若い男性が仕事ではなくビデオゲームをする行動の変化は、金融政策のみで解決するというよりも、構造的な労働の問題を示唆している。その結果として、予想よりも低い予想労働参加率、予想を下回る経済成長率、そして雇用者がますます珍しい有能な労働者を求めることで起こった賃金の緩やかな上昇が起こった。(出典:FxStreet)
■エムトレの視点
アメリカの労働市場における構造的な問題は、日本においても無視できる内容ではない。非農業部門就業者数は、今年に入り順調な伸びを見せ、年内あと一回もしくは一回以上の利上げを正当化させるには悪くない状況になってきている。他方、日本においても同様だが、賃金の上昇率は想定を下回っており、構造的問題による生産性の限界が懸念されている。
なお、記事中にあるオピオイドとは、鎮痛剤の一種であり、ヘロインに似た化学物質の総称である。慢性疼痛に処方されるようである。アメリカでは2012年の1年で、2億6000万近い鎮痛剤が処方され、継続服用者の4人に1人が中毒になっているとの報告もある。鎮痛剤によっては、労働意欲を減衰させることもあるため、間接的に労働市場への参加者の減少につながっているのかもしれない。
【ニュース提供・エムトレ】《FA》