米政府が無生物を告訴、その理由は?

2017年7月10日 07:45

先日、米国で工芸品などを販売するHobby Lobbyが古代メソポタミアの歴史的遺物をイラクから大量に密輸したとして、米政府が民事訴訟を提起した。Hobby Lobbyは輸入手続きに不備があったことを認め、和解の手続きを進めているが、この訴訟の被告はHobby Lobbyではなく、輸入された物品なのだという(Consumeristの記事)。 訴状(PDF)によれば、被告は楔形文字が刻まれた古代の粘土板およそ450点と古代の粘土製封球(ブッラ)およそ3,000点となっている。無生物を相手取った訴訟は「in rem」(対物)と呼ばれ、違法に入手・製造された金品を米政府が差し押さえ・没収するためによく行われているそうだ。 Consumeristによれば、1960年に18金製の鶏が逮捕・告訴されたのをはじめとして、アップルサイダービネガーや子供用のパジャマ、現金、フカヒレなど、対象は多岐に及ぶようだ。18金の鶏は違法に製造・入手されたわけではないが、当時の法律では大量の黄金を保有すること自体が違法だったという。 アップルサイダービネガーを相手取った1924年の裁判では、季節によって保存用の水分を抜いたリンゴを原料に製造したことが偽装表示とみなされた。アップルサイダービネガーの原料に生のリンゴを使用することは、93年後の現在も米食品医薬品局(FDA)の表示基準になっているとのこと。 このほか、パジャマは危険な化学物質の使用、現金は税関での申告漏れ、フカヒレは違法な漁で採取されたとの疑いにより沿岸警備隊が米国籍の船から差し押さえたものだ。ただし、この船は漁を行っておらず、各地で漁船から買い集めたものだと判明したため、裁判所では没収を認めなかったとのことだ。 

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