北里大、脂肪肝を抑制する化合物の合成に成功
2017年7月10日 06:53
北里大学の研究グループは、肝臓に脂肪が溜まって脂肪肝になることを抑制する化合物を合成した、と発表した。
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脂肪の多い餌を与えたウサギに合成された化合物を投与したところ、血液中のコレステロールを減少させ、脂肪肝が抑制されたという。
そもそも、肝臓にはコレステロールの分泌や吸収をコントロールするための、「SOAT2」という酵素がある(同じものは小腸でも機能している)。今回作られたものは、このSOAT2を阻害し、その働きを弱める物質だ。研究グループは、微生物からSOAT2に選択的に作用する化合物を見い出し、構造を改変して、その働きを高めることに成功した。
脂肪の多い餌を与えられたウサギは、血中のコレステロールが増える。その状態で、この化合物を投与すると、肝臓についた脂肪は徐々に減った。しかし、化合物を投与しなかったウサギは、脂肪肝が悪化し続けた。
長期間脂肪の多い餌を与えたウサギの肝臓を調べると、肝臓は白っぽくなり、脂肪が溜まっていて、その上そのウサギは動脈硬化も発症していたが、新化合物を投与したウサギは、そのいずれもが抑制されていたという。
さらに、生まれつき脂肪を分解する酵素がない「ウォルマン病」という稀少な病気を持つマウスで実験を行ったところ、症状の進行が抑えられることも分かった。
ちなみに、脂肪肝は人間の場合はアルコール依存症の二次障害として有名であるが、非アルコール性脂肪肝というものもあり、日本だけで2,000万人の患者がいるとされる。これが悪化すると肝炎となり、さらに悪化すると肝硬変、肝臓がんに変異していくが、現状では治療薬がなく、重要な研究テーマである。
研究の展望としては、今後も動物実験を続け、今度は安全性についての検証を行い、ヒトへの応用を目指していきたいという。また、共同で開発を進める企業を探し、実用化への道を探っているとのことである。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)