超高齢化社会の日本を元気にする、スマートウェルネス住宅

2017年7月9日 20:11

 世界に先駆けて超高齢化社会に突入した日本。国立社会保障・人口問題研究所が公表している「日本の将来推計人口」によると、我が国の2020年の高齢者人口は3612万人に達すると推計されている。超高齢社会は、様々な課題を抱えているが、その一つが高齢者向け住宅の整備だ。

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 そこで近年、注目されはじめているのが「スマートウェルネス住宅」だ。スマートフォンやスマートファクトリーなどの普及でスマートという言葉は認知されるようになってきたが、ウェルネスは未だ、あまり聞きなれない言葉だろう。

 ウェルネスとは、世界保健機関 (WHO) が国際的に提示した、「健康」の定義を一歩踏み込んで、より積極的で広範囲な視点から見た健康観を意味する用語で、1961年にアメリカの医学者、ハルバート・ダンによって提唱されたものだ。つまり、スマートウェルネス住宅とは、例えばIoT技術や省エネ・創エネ技術など、最先端の技術を活用して、より安全で安心、健康的に暮らせる要素を取り入れた住宅……と理解して、ほぼ間違いないだろう。余談になるが、住宅以外にも日本では、サントリーのグループ会社であり、健康食品やサプリメントなどを販売するサントリーウェルネスのように、ドラッグストアやスポーツジムなどでも、健康関連の業界では続々と、このウェルネスという言葉を用いた社名やサービスが増え始めている。

 国も、スマートウェルネス住宅への取り組みを積極的に進めており、国土交通省補助事業として、スマートウェルネス住宅等推進モデル事業を行っており、サービス付き高齢者向け住宅の整備事業や公的賃貸住宅団地等の住宅団地や共同住宅において、高齢者、障害者又は子育て世帯の生活を支援する施設を整備する事業及び高齢者等の居住の安定確保と健康の維持・増進を推進する先導的な住まいづくり又はまちづくりに関する事業について、補助金の交付を行っている。

 これまでに選定された事業としては、野村不動産が千葉県船橋市で展開している「スマートウェルネスタウン(船橋モデル)」構想や、一般社団法人神奈川県建築士会の「地域高齢者居住環境アセスメント等モデル事業」、東京ガス株式会社の「高齢期の住宅内の不便さや危険を理解する体験、プログラム開発」などがある。また、大手ハウスメーカーのパナホームが、大阪府の千里ニュータウンにおいて、戸建改修と新築高齢者賃貸住宅の新築を行うともに、エイジングコーディネーターによる資産管理も含めたトータルサポトを提供しようとする事業もある。

 さらに、地方自治体でもウェルネスへの取り組みが活発になりつつある。大阪府では、吹田市と摂津市が2018年度に予定されている国立循環器病研究センターの吹田操車場跡地への移転建替を見すえた「健康・医療のまちづくり」を進めており、それを中心とした国際級の医療クラスター、北大阪健康医療都市「健都」の実現に向けて取り組んでいる。

 健都の街区は、フィットネススペース等の「生活習慣病予防や介護予防を特に意識したウェルネス機能」、地域密着型サービスやそのほか医療・介護系サービスを本住宅居住者だけでなく地域住民にも提供する「地域包括ケアシステム機能」、国立循環器病研究センターや市立吹田市民病院など、「健都内外の関係機関等との連携による付加価値機能」の大きく3つの特徴を持つ住宅環境のもと、高齢者向けウェルネス住宅が提供される予定だ。

 吹田市は、所有する約4000平方メートルの事業用地に一般定期借地権(期間50年)を設定し、今年6月には、同街区の整備・運営を行う優先交渉権者として、パナホームを選定し、西日本初の健康・医療・介護・多世代交流をテーマとした高齢者向け住宅の先導的モデル事業の実現に向けて、着実に計画を進めている。

 生きている限り、老いは決して免れることのできない運命だ。でも、健康で安全安心生活を送っていれば、たとえ90歳代でも若々しく楽しい人生を送ることができるだろう。一方、健康を損なったり、健康や安全面でストレスの多い生活を送っていると、まだ60代でも、老人と呼ばれかねない。「健都」のような町が日本全国に増えてくれれば、超高齢社会でも活き活きとした日本の未来が見えてくるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)

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