【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆北朝鮮の圧迫、再び◆
2017年7月9日 10:05
*10:05JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆北朝鮮の圧迫、再び◆
〇米戦略に行き詰まり、不透明感〇
北朝鮮が「ICBM」実験の成功を発表した。完成された、ましてや量産されたものではなさそうだが、米当局も「ICBM」と認知するレベルに至ったようだ。米国の記念日や重要イベントに、発射をぶつけて来るのは従来通りのやり方。
トランプ大統領が「ほかにやることないのか」と怒るのも頷ける。米国の戦略の行き詰まりを示している印象が強い。4月以降、中国に圧力を掛けさせる方式を狙ってきたが、成果は部分的で、中国の逃げ腰を強めただけに見える。4日、モスクワの中ロ首脳会談で出された声明は、中国が策定した緊張緩和計画(従来から主張しているもので、北朝鮮が核・ミサイル開発を止め、米韓が合同軍事演習を中止、六カ国協議の再開を目指す)に参加するよう呼び掛けるものだった。中露は現状維持で良い、との見方を確認した格好。ただし、中国の劉国連大使が述べている通り、「北朝鮮は遅かれ早かれ制御不能になる」との警戒心がある。
7月3日、軍事情報で最も権威あるとされるストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は報告書で「北朝鮮は約10-20発の核弾頭を製造するのに十分な核物質を有しており、それは過去に比べて増えた」と発表した。実際に核爆弾を複数個以上保有しているとの見方もあるが、今日明日使えるものではないとの見方が一般的。
軍事行動ができない分、米国と北朝鮮との鬩ぎ合いは既に激化しているとの見方もある。6月21日の米中「外交・安全保障対話」では、北朝鮮との「あらゆる取引」の禁止で表面上合意し、米国は丹東銀行などの制裁に踏み込んだ。実態はなかなか明らかにされないが、サイバー戦争の封じ込め、テロ活動抑止、資金獲得封鎖など広範囲な作戦とセットで展開されていると見られる。
この中で、日本も参加していると噂されるのが北朝鮮労働者の外貨獲得制限。先般、マレーシアが受け入れ全面拒否を表明したが、いわゆる「39号室」資金(金正恩秘密資金を扱うとされる)制限へ、世界各地で締め出しを行っているとされる。物資的には石油供給の制限で、中国からのパイプラインに加え、ロシアルートで石油製品が流れていることが暴露された。秘密ルートが暴露、潰されて行けば、従来通りの経済活動は困難になると見られる。
有事が起こるかどうかの予測は困難、仮に起こった場合でも、その後の朝鮮半島情勢のシナリオはない。北朝鮮主導の「高麗連邦」構想も困難だろう。当面は、突発的なニュースを警戒しつつ、水面下の経済封鎖の進展、影響度を測っていくことになると考えられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/7/5号)《CS》