中国の史書と年輪に見られる中世の太陽活動の痕跡が一致 京大の研究
2017年7月3日 17:00
京都大学の研究グループは、中国の正史歴史書である『元史』『明史』の記述内容と、年輪の炭素同位体比などから割り出した太陽活動の推定をもとに、13世紀から17世紀にかけての太陽黒点とオーロラの発生の痕跡が両者において一致することを突き止めた。
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太陽はいつも同じように輝いているように見えるが、猛烈なフレアの噴き上げや、太陽嵐など、数百年に一度の活動変異を起こすこともあり、これが自然災害をもたらすことが知られている。そこで、太陽の活動を分析することは専門家にとって重要な研究テーマであるわけだ。
天文学の歴史は長いが、精度の高い顕微鏡は高度な技術の所産であり、望遠鏡による黒点観測の監視には、せいぜい400年程度の歴史しかない。太陽嵐などのような、数百年に1度しか見られない現象を分析するには、記録が足りないのである。
たとえば1859年に起きた太陽嵐「キャリントン・イベント」は観測史上最大であるとされている。このとき、アメリカからヨーロッパにかけ、広い範囲で電報システムなどに障害が生じ、またハワイやカリブ海などでオーロラが確認された。
オーロラは肉眼で観測可能であるので、比較的記録には残りやすい。とはいえ、歴史文献と科学データの直接的な照らし合わせによる研究は、これまでさほど行われてはいなかった。
そこで研究グループは、中国の正史から「黒気」「黒子」などの黒点を指すと考えられる記述、またオーロラを意味する「赤気」という記述を抜き出した。そして、一つ一つの記述が実際の太陽活動に関する科学的測定データと一致するかどうかを、太陽や地磁気の専門家とともに検討した。
結果として、中国の史書は、天文学的な記述においてもかなり信憑性が高かったということが明らかになったという。その中には、17世紀初頭、ヨーロッパと中国で同じ黒点が観測されたという記録もあった。
なお、今後の研究としては、中国以外の地域の史書の検証を進めていきたいという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)