企業の想定為替レートは平均1ドル=110.06円 2017年4月時点
2017年7月2日 19:50
海外情勢の変化により為替レートが変動するなか、かつて「有事」となればドル買いがセオリーだったが、近年では「有事の円買い」によって円高に進むケースも増えてきた。また、企業が予め想定した名目為替レートと、実際の名目為替レートに大きな差異が生じた場合には、企業業績を大きく左右することとなる。とりわけ、中小企業の想定為替レートは企業の与信にも影響を与える。そこで、帝国データバンクは、企業の想定為替レートについて調査を実施した。
【こちらも】上場のメーカー130社、18年3月期の想定為替が1ドル110円と105円に二分
2017年4月時点における、企業の想定為替レートは平均1ドル=110.06円(以下、1 米ドル当たりの円レートを示す)となり、中央値、最頻値はともに110円だった。想定為替レートの分布は、106~110円の間を想定している企業が43.2%で最も割合が高かった。次いで、111~115円が 20.8%、100~105円が 15.0%となった。2017年以降、名目為替レートが110円台で推移するなか、多くの企業が110円前後の水準を想定している様子がうかがえる。
企業からは、「朝鮮半島有事などの予測できない国外要因によって為替がどの程度変動するかによって、今後の投資意欲と、それを実現するための資金調達の動きが大きく変わるのではないかと危惧している」(機械設計、福島県、105円)など、為替相場の変動が設備投資や資金調達行動にも影響するという意見があがった。また、円高となった場合の影響として、「円高による輸入原料の引き下げに期待」(水産缶詰・瓶詰製造、青森県、105円)とする声がみられた一方、「円の高騰が続けば大きなダメージ」(電子応用装置製造、栃木県、110円)といった、事業内容による違いも如実に表れる指摘もあった。
想定為替レートを業界別にみると、『農・林・水産』や『不動産』が 108 円台を想定している一方、『金融』『卸売』の2業界は110円台とみている。想定為替レートは、最も円安水準の『卸売』と最も円高水準の『不動産』で2.69 円の範囲で差がみられている。
輸入企業は為替レートが円安水準の場合、輸入価格の上昇による収益悪化リスクを受ける一方、輸出企業では、円高が進行することで輸出量の減少または輸出価格の上昇による海外需要の縮小というリスクを受ける。
そこで、想定為替レートについて輸出・輸入別にみると、事業として間接または直接のいずれかで「輸出」を行っている企業では 09.85円となり、そのうち、海外取引が「直接輸出のみ」の企業は108.85円だった。
他方、間接または直接のいずれかで「輸入」を行っている企業は111.15円、そのうち、「直接輸入のみ」の企業は112.43円となった。しかし、直接輸出のみを行っている上場企業(108.60 円)と未上場企業(108.86円)で大きな差は見られなかった一方、直接輸入のみを行う企業は、上場企業(113.13円)が未上場企業(112.41円)より円安水準を想定している。
「輸出」企業は「輸入」企業より 1.30 円程度、円高傾向で想定していることが明らかとなった。とりわけ、海外取引として「直接輸出のみ」を行っている企業は、「直接輸入のみ」の企業より約3.58 円の円高水準を想定していた。(編集担当:慶尾六郎)