名古屋大、神経の難病ALSを体外で再現する装置を開発
2017年6月21日 08:03
名古屋大学の清水一憲准教授らの研究グループは、運動神経細胞が侵食される原因不明の難病である筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS)の病理機序を、人体の外で再現する機械的な装置を開発した。ALSの原因の究明や、治療薬の開発に繋げていきたいという。
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何年か前、「アイスバケツチャレンジ」というのが話題になったのを覚えておられるだろうか。主にアメリカなどで、著名人が人前で氷水をかぶり、研究費集めのチャリティなどを行ったものである。色々とトラブルもあり、また批判もあった運動ではあるが、何はともあれ、あれが対象としていたのがALSという疾患である。
なお、もう一つ余談を述べておく。筋ジストロフィという有名な難病がある。これは症状だけを見るとALSにとてもよく似ている。ただ、こちらは遺伝疾患であるということが既に明らかになっており、また、現在分かっている範囲の研究によれば、筋ジストロフィは筋肉の疾患であるのに対しALSは中枢神経系の疾患である(らしい)。
では名古屋大学が開発した装置について紹介しよう。この装置は、筋肉細胞と神経細胞を培養する2つのシリコン樹脂性の小さな容器を、微小なトンネルで繋ぎ、その間に神経細胞が情報をやりとりする軸索を通した仕組みになっている。この軸索が繋がらないと、ALSなどの問題が引き起こされる。なお、培養する細胞はiPS細胞を利用して作られている。
装置はごく小さなもの(縦横が5マイクロメートル)であるが、そこに60本のトンネルが掘られている。神経細胞と筋肉細胞が接続する様子を観測することには既に成功しているという。
ALS患者のiPS細胞から作った神経細胞を利用した実験は、今年度内に、愛知医科大学の研究グループと共同で開始される。異常が生じた細胞を取り出し、遺伝子の働きなどを詳しく分析する予定であるという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)