日本郵政が野村不動産の買収を中止か、価格など交渉条件に溝

2017年6月19日 08:15

 日本郵政による野村不動産ホールディングスの買収が白紙になる見込みだと、日本経済新聞などが報じた。株価高騰の影響で買収価格など条件面で折り合いがつかなかったとみられ、日本郵政は野村不動産の筆頭株主である野村ホールディングスとの交渉を中止。戦略の見直しを図る。

 日本郵政では郵便事業などの業績低迷が目につくが、不動産においては大きな潜在力がある。全国で2万4,000もの郵便局や大規模社宅といった資産を兆円規模で抱え、立地も良い。上場企業の中でもトップクラスだ。その再開発や活用の仕方によっては多大な利益が得られる。

 ゆえに不動産業界大手の野村不動産を買収しそのノウハウを得れば、事業を強化して新たな収益の核を生み出せる可能性が高まる。そんな思惑があってか日本郵政は5月に資産査定の手続きを開始。買収額は当時の株価からいって数千億円規模とも見積もられた。

 しかし、交渉に入ると野村不動産の株価が高騰し、買収価格も上昇。以後進展はみられなかった。日本郵政は以前オーストラリアの大手物流会社トールを約6,200億円で買収するも、結果として失敗。約4,000億円もの損失を計上し、決算では民営化後初の赤字を出した。その過去が買収自体への批判も集めていた。

 こういった経緯もあり、今回交渉中止の運びとなったと考えられる。ただ、日本郵政がこのまま買収を諦めるかは定かではない。なぜなら財務省が保有する日本郵政グループ株の第2次売却が控えているからだ。なお、主幹事証券会社には野村証券も名を連ねている。

 財務省は2015年11月の日本郵政等の上場時に保有する株の一部を売却し、総額1兆4,000円の収入を得ている。東日本大震災の復興財源として合計4兆円の確保を目指し、これからもさらに売り出していく予定だ。第2次売却でも上場時と同じ収入を想定しているとされる。

 とはいえ株価は当初売り出し価格として想定したライン近辺で揺れており、投資家や証券会社も不安を解消できない。ここでトールの失敗を払拭し、かつ株価上昇を狙って新たな買収劇を断行する可能性もある。本件に野村証券と野村不動産が関与している点も無視できない。

 現状、株式売却は7月にも実施される見通し。今後の動向がますます注目を浴びそうだ。(記事:小椋恒示・記事一覧を見る

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