世界規模で進む工場へのIoT導入、「見える化」に貢献する日本の最新技術

2017年6月18日 20:17

 18世紀後半の「第1次産業革命」は、蒸気機関による工場の機械化。19世紀後半の「第2次産業革命」は、電力と石油の活用による大量生産。20世紀後半の「第3次産業革命」は、IT技術の導入によるオートメーション化。そして今、「第4次産業革命」をもたらすものとして注目されているのが、IoTと人工知能だ。

 ドイツの「Industry 4.0」をはじめ、アメリカの「Industrial Internet」や中国の「中国製造2025」など、世界各国が国家規模のIoT活用への取り組みを進める中、日本でも総務省・経済産業省の協力のもと産官学一体でIoT技術の活用を推進する「IoT推進コンソーシアム」が2015年に設立され、IoT社会に向けて動き出している。

 経済産業省によると、人工知能やIoTがもたらす経済価値はトータルで、日本経済の約4倍もの規模になるという。例えば、日本の名目GDPは 4.1兆ドルだが、人工知能やIoTを導入することによって、公共サービスだけでも4.6兆ドル、流通・小売・物流の分野で2.1兆ドル、ものづくり分野では3.9兆ドルもの経済効果をもたらすというのだ。

 中でも、日本経済を盛り上げる期待がかかっているのが、工場のIoT化だ。

 工場をIoT化することで、「工場の見える化」を実現し、機械同士、また機械と人が連携して動く事で製造現場の最適化を図り、製造コストを大幅に削減しつつ、生産性を飛躍的に向上させることができる。また、遠隔地からでも、設備や機械の稼働状況、設置環境、利用状況、故障状況などを監視するのにも最適だ。

 例えば、自動車部品サプライヤーのデンソーも、IoT技術を中核に工場を「見える化」し、同社が世界に展開する約130の工場を結ぶ「ダントツ工場」プロジェクトを早々に立ち上げ、2020年までに生産性を2015年比で30%高めることを公言している。

 しかし、工場をIoT化するには大きな課題もある。工場にはつなぐべき機器があまりに多過ぎるのだ。大きな経済効果を生み出すことは分かっていても、導入にはかなりの負担がかかる。新設の工場ならばまだしも、稼働中の既存の工場をIoT化しようとすると初期投資にはかなりの費用が掛かってしまうだろう。最新の製造機器にはインターネット接続機能がすでに備わっているものや、オプションで追加できるものも珍しくはなくなってきたが、それでも負担は計り知れない。資本力のある大手企業の直営工場ならともかく、最前線ともいえる中小の工場では、導入するのに躊躇してしまうのは仕方がないだろう。

 ところが、このような課題に対し、電子部品メーカー・ロームのグループ会社であるラピスセミコンダクタが面白いものを開発した。

 同社が開発したものは、920MHz無線を搭載した低消費電力マイコンボード「Lazurite Sub-GHz」を使用し、工作機械の稼働率モニタリングを行って「工場の見える化」に貢献する、電流検出用中継基板「CT Sensor Shield」。電流検出センサを簡単に接続できるシールド基板で、廉価に導入できるだけでなく、現在稼働中の機械にポン付けできる手軽さが大きな特長となっている。最新の製造機器に入れ替えれば、費用はもとより、機器のオペレーションを再習得する時間なども必要になる。しかし、使い慣れた工作機械をそのまま使えるなら、そういう問題は一気に解決できる。大がかりな設置でも製造ラインを止める時間も最小に留まるので、設備が稼働していない時間もなく、導入へのハードルが一気に下がるだろう。大手だけでなく、中小の工場でも、この製品を用いることで、工場の「見える化」を簡単に導入することができるのだ。さらにネットで簡単に購入可能ということも、メリットのひとつであろう。

 日本の強みは、こういった縁の下の技術力、そしてその技術力に裏打ちされた工夫の力が、他国よりも優れていることではないだろうか。IoT化への動きは世界的な規模で進んでいるが、残念ながら、現段階では日本はその中では影が薄い。しかし、手軽なIoTが中小の企業や工場に導入されて、「工場の見える化」の裾野が広がれば、まだまだ挽回は可能だ。(編集担当:藤原伊織)

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