【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆香港は坑道のカナリアとなるか◆
2017年6月18日 09:50
*09:50JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆香港は坑道のカナリアとなるか◆
〇静かに緊張高まる香港の行方を注視〇
週明け12日のNY市場は、ダウが0.17%安、ナスダックが0.52%安。先週末のハイテク株調整の余韻が残った。ただ、寄付き直後の下落幅を縮めて終わった。昨日のアジア市場では日経平均0.52%安、台湾・加権0.88%安、韓国KOSPI1.00%安、香港ハンセン1.24%安。米ドル・ペッグ制の香港の連動が大きかった。
その香港は今、静かな緊張に包まれている。7月1日に本土復帰20周年記念を迎え、習近平国家主席が訪問すると伝えられているためだ。既に最高レベルの警備体制に向け準備が進められていると言う。既に、半年前から暴力団撲滅行動などを行い、その規模は2000年来で最大規模とされる。香港は上海閥の拠点と見られている。2003年に創設された共産党中央香港マカオ工作協調班の初代班長は曾慶紅氏。政界、経済界からマフィアまで大きな影響力を発揮してきたとされる。それを引き継ぐのは現在政治局ナンバー3の張徳江氏。金日成大学に留学し、江沢民訪朝時に通訳兼カバン持ちから出世したとされる。香港・マカオのみならず北朝鮮政策でも大きな影響力を発揮(先般の香港行政長官選挙は広州で陣頭指揮したとされる)していると見られる。中国の対北朝鮮締め付けが本格化するのは共産党幹部人事が決着してからとの観測があるのはそのためだ。
秋の共産党大会での5年に一度の幹部人事で、張徳江氏は引退、習氏側近とされる汪洋副首相の昇格が取り沙汰されている。その汪洋副首相は昨日、榊原経団連会長を団長とする日本の訪中団(日中国交正常化45周年記念行事の一環)と会談した。米トランプ政権の対中折衝は習主席と行われており、安倍首相は江沢民派寄りとされる日本の親中勢力の立ち位置是正を図っているように見える。中国自動車販売が伸び悩む中、日本メーカーの自動車販売が伸びており、日本経済にとって中国は静かな押し上げ要因と考えられる。安定軌道維持に日中関係是正、緊張抑止が必要と見られている。
香港ハンセン指数は15年4月に28588ポイントの高値を記録した。今から見れば、夏の中国大波乱に先行して下落基調となった。天津大爆発の8月は2万ポイント大台を維持したが、11月以降再下落、安値は16年2月の18278ポイント。下落率は36%。そこから徐々に立ち直り、1月以降上昇ピッチを強め、15年以来の26000ポイント台を回復していた。今回はまだ下落基調に転じたと見るのは時期尚早だが、米ハイテク株の動向より中国内部の政治経済情勢の軋轢をいち早く投影する可能性がある。
10日、上海市繁華街で数百人規模とされる不動産規制に反発したデモが行われた。情報はSNSなどを通じて香港メディアが一斉に報じ、明らかとなった。また、12日、台湾で香港民主化支援議連が発足した。民主化運動の軋轢として表面化するケースも多いので、香港情勢は静かなチェックポイントとなろう。
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出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/6/13号)《CS》